温もり溢れる柔らかなデザインが人気を集める北欧家具。 そのルーツはどこにあるのか。
「デザイン」は、形や色など物の外観的特徴を指す言葉として広く使われています。
本来、暮らしや社会を整えるために行われる活動のことを指しており、その意味ではデンマークなどの北欧諸国はその本質的な意味合いが定着した国と言えます。近年よく紹介されている「ヒュッゲ(Hygge)」という言葉。ヒュッゲは概念的な言葉なので人によっても解釈は少しずつ変わってきますが、デンマーク語の言葉で、人と人とのかかわりの中で、居心地の良い心地よさといった意味合いを持っています。その言葉にも表れているように、より良い暮らしを第一の目的とする考え方は、家具のデザインにも表れているといえます。 現在も、品質の良さや、美しく長く使えるデザインとして評価され、人気を博す北欧デザインの家具。どのような背景のもとに、北欧デザインが生み出されたのかを考えてみます。
北欧の気候
北欧デザインは、デンマーク・スウェーデン・ノルウェー・フィンランドで生み出されたデザインのことを言いますが、中でもデンマークはフュン島、シェラン島、その周辺の400以上の島々からなる小国です。かつては、現在のスウェーデン、ノルウェー、ドイツなどを支配する大国でしたが、現在は日本の九州ほどの広さ(43,094㎢)の国になりました。日本よりも随分北に位置しており、夏は心地の良い気候が続きます。冬場は暖流のためにそれほど厳しい寒さではないものの、雨や曇りが多く、夜の時間が長いのが特徴的です。冬場は室内で過ごす時間が長くなるため、より快適な住空間が目指されたと考えられます。
手厚い社会サービス
デンマークは、社会サービスが手厚い国としても有名です。医療費用、出産費用、教育費用が無料で、高齢者や障碍者へのサービスも充実しています。そのために、高い税金を支払っていますが、医療に関しては些細な風邪などはもちろん、重い病気によって大きな医療機関で高度な治療を受けることになったとしても、無料でサービスを受けることができます。教育費は、小学校から大学までの公立学校は全て無料となっています。日本では大学時代は勉学に支障がでるほどアルバイトをしないと、学費を払えないといった問題を抱える学生もいますが、デンマークでは返済義務のない援助金が国から支給されます。それでも足りない場合はアルバイトも行いますが、アルバイトに明け暮れるというような状況にはならないように、国が一丸となってが未来を担う若者を育てているといえます。
国民全員で集めたお金を大切に、国民のために使っていくので、その仕組みの中で育った若者がそんな社会に貢献できるように育ち、社会参加していく。そのようなサイクルが出来上がっています。家具のデザインも、シンプルで機能的、繊細な職人技の長く愛される家具が作られているのは、土地も含めて国として皆がより良い生活を目指し、社会に貢献していくという考え方を基にしているからかもしれません。
参考文献『流れがわかる! デンマーク家具のデザイン史: なぜ北欧のデンマークから数々の名作が生まれたのか』誠文堂新光社