シンプルな家具とインテリアが好まれる理由。 インテリア計画においての色彩と造形の7つの着眼点
最近シンプルな家具が好まれる傾向にあります。
シンプルな家具はどのような理由で好まれるのでしょうか。インテリアコーディネートの造形と色彩の観点から考えてみます。
造形
インテリア計画は、空洞である部屋という空間(インテリアスペース)に、モノというエレメント(構成要素)を配置する作業 といえます。部屋という空間は意識されにくいものですが、インテリアを考える時は空間の形やボリュームなどを把握しておくことが大切です。
また人には以下のような造形の捉え方があり、これらの観点を満たして居心地の良い空間が構成されると考えられます。
統一
造形美の基本には、「統一(ユニティ)」という考え方があります。エレメントが整理され統一されると、全体が一定の秩序を感じさせる効果があります。その逆として、「変化(バラエティ)」があり、統一感が強く単調になった際に、変化の要素が加わると雰囲気が和らぐ効果をもたらします。また、全体を支配する特定の要素がある場合それを「支配(ドミナンス)」といいます。全体を構成する中の大きさや色など、特定の要素に支配的な役割を持たせると他の部分がある程度統一性を欠いていても、全体として調和して見えるという特徴があります。
調和
バランス
また、垂直線を軸とした「対称(シンメトリー)」は静的な安定感や荘厳さがあり、点を中心とした「放射対称」は、動的な変化が見られます。「非対称(アシンメトリー)」は構成に変化をもたらす手法です。
リズム
一定の間隔である要素が規則的に繰り返し配列すると、躍動感や変化をもたらす律動(リズム)が生まれます。同じ要素の繰り返しである反復(リペティション)、段階的に変化をつける階調(グラデーション)を用いて表現されます。
色彩
インテリア計画においては、モノの選択・配置の計画と同時にカラースキーム(インテリアにおける色彩計画)が重要となってきます。
色彩の調和と不調和については様々な理論があります。しかし、カラースキームにおいて配色の良し悪しは感覚に由来する部分が多いため、定式が成り立たない部分です。
さらにインテリアなどの実際の配色にあたっては、色の位置関係や面積関係が関わってきます。また、表面がざらざらしたものは光の反射率が低いため、同じ色料を使っていても明度、彩度とも低く見えるなどの材質や、光などの効果も留意する必要があります。
カラースキームでは、次のような色を意識して計画を進めることが多いとされています。
ベースカラー(基調色)
床・壁・天井など大面積を占め、長期間変更しない色のことをいいます。刺激の強くない彩度の低い色を用いるのが無難だと考えられており、壁や天井は圧迫感を与えないために高明度・低彩度の色を、床は低明度の色を用いると良いとされています。また、日本の代表的な基調色はヒノキなどの木肌の色に近い、色相10YR(黄味の強いオレンジ色)で高明度・低彩度の色です。
アソートカラー(配合色)
カーテンや家具など、中面積で基調色に変化をつける色をさします。ベースカラーと同一または類似色相で、明度や彩度で変化をつけた色が選ばれることが多いとされています。
アクセントカラー(強調色)
アクセサリーや絵など、小面積で頻繁な変更が可能な色のことです。色相、明度、彩度などのいずれかで、ベースカラーやアソートカラーとの対比色を用いるとアクセントになるとされています。
主にアソートカラーの役割を持つ場合が多い家具において、ベースカラーに近い落ち着いた印象の色味が選ばれやすいのですね。造形に関しても全体をシンプルにバランスよくまとめ、細部でアクセントを用いることで、飽きのこない落ち着きのある空間がうまれるのです。
居心地の良い空間を目指すインテリアの一部として、シンプルな家具が好まれやすいことが納得できます。
参考文献
『インテリアコーディネーター1次試験合格教本第11版下巻』ハウジングエージェンシー出版事業部