椅子のデザイン②

椅子のデザイン②


名作椅子と呼ばれるものは、様々なジャンルのものがたくさんあります。

今回はスツールタイプをいくつかピックアップしてご紹介します(以前の記事:椅子のデザイン①)。

 

スツール60

アルヴァ・アアルト

1933年 アルテック

  

 

出典

名古屋市立美術館「アルヴァ・アアルト もうひとつの自然」展にて

スツール60

2019年2月3日 筆者撮影 

  

 

スツール60のはフィンランドに自生するバーチ材(白樺)を用いている。特に脚部分は「L-レッグ」と呼ばれ、アアルトの他の椅子やテーブルにも応用されている。開発には時間がかかり、バーチの無垢材にスリットを入れて、その間に薄い板を挟んで接着や曲げ、乾燥、そして研磨を経て完成する部材である。

  

 

出典

名古屋市立美術館「アルヴァ・アアルト もうひとつの自然」展にて

レッグなどの曲木パーツ

2019年2月3日 筆者撮影

 

 

それに対して座面と脚部は、ビスで固定という簡単な構造を持つ。重ねられた様子も美しいなどシンプルで機能的、多くの人に手にとってもらえる価格帯によって、人々に愛される椅子の定番となった。現在日本では、コムデギャルソンやミナペルホネンとのコラボによっても、人々を惹きつけている。

 

 

  

出典

名古屋市立美術館「アルヴァ・アアルト もうひとつの自然」展にて

スタッキングされたスツール60

2019年2月3日 筆者撮影 

  

   

ウルム・スツール

マックス・ビル

1954年 ヴォーンベダルフ

 

 マックス・ビルは、アーツアンドクラフツ運動に連なる手仕事の尊重と、モダニズムを推進する規格化、量産化との融合を目指した総合芸術学校バウハウスで学んだ。

ウルムスツールは、自身が学んだバウハウスの理念を継承する教育機関、ウルム造形大学で、学生たちが腰掛けるための備品として誕生した。スツールといっても、用途は座るだけにとどまらない。横に倒してサイドテーブル、逆さまにしてブックシェルフ、貫の丸棒を持ち手にすれば持ち運ぶこともできる、多目的に使える道具といえる。

  

 

  

出典

ショールームで使用しているウルムスツール

サイドテーブルとしての様子

  

作りにおいても、細かなこだわりが見受けられる。座面と側面の板は反りやねじれを防ぐための木工技術である「組継ぎ」、脚部は「相互はぎ」、貫は「くさび細継ぎ」と釘を使わず、適材適所に異なる工法で組んでいる。

 

 

  

出典

ショールームで使用しているウルムスツール

座面と側面の組継ぎ

  

脚部と貫には丈夫なビーチ材を使用して強度を高め、意匠においても、エッジの部分をわずかに削り、シャープなラインをより美しく見せるなど、細部まで手が混んでいる。

    

  

バタフライスツール

柳宗理

1956年 天童木工

 

柳宗理の代表作ともいえるバタフライスツール。蝶のようにも鳥居のようにも見える軽やかなフォルムが特徴的で、モダンながらどことなく和を感じさせる。発表の翌年にミラノトリエンナーレで金賞を受賞するなど、デザイン、技術力が海外からも高く評価されている。

別記事「日本のデザイナーと名作椅子」でも触れているが、戦後訪問したアメリカのチャールズ・レイ・イームズのもとで、負傷兵のための成形合板のレッグスプリント(添え木)の存在に着目した。成形合板の加工に欠かせない高周波発振装置を導入していた天童木工とともに開発を進め、試行錯誤ののちに、わずか7mmの成形合板2枚と、上部2つのねじ、下部1本のステーによるスツールを完成させる。

変形を防ぎつつも成形合板の強さを引き出すため、内部のブナ単板の木目方向は1枚ずつ変えて重ね合わせたり、金具は目立たぬような色のもの、ステーは真鍮仕上げ、ネジの頭は「柳ライン」と呼ばれるふくよかな丸みのある形を使うことで無骨なネジのイメージを払拭するなど、シンプルながらもこだわりが詰まったスツールである。 

 

  

  

参考文献

『ストーリーのある50の名作椅子案内』萩原健太郎 , スペースシャワーネットワーク

『天童木工』菅澤光政 , 美術出版社

『名建築と名作椅子の教科書』アガタ・トロマノフ , エクスナレッジ