椅子のデザイン①

椅子のデザイン①

名作椅子と呼ばれるものは、これまでの記事で紹介した北欧デザインに限らず様々なジャンルのものがたくさんあります。

いくつかピックアップしてご紹介します。

 

No.14

ミヒャエル・トーネット

1859年 トーネット

 

  

石村真一著, トーネット社製曲木椅子の初期構造について

日本デザイン学会研究発表大会概要集 46(0), 180-181, 1999

日本デザイン学会

論文内 p.181より抜粋

   

曲木の技術を用いて曲線的な造形が特徴的なトーネットの曲木椅子。曲木技術による、背の笠木から後脚にかけてとその内側に入る背あたりのU字形、籐で編まれた座枠、円形の貫、2本の前脚の6つのパーツから構成されている。19世紀末のヨーロッパでは「アール・ヌーボー(「新しい芸術」の意)」と呼ばれる芸術運動が盛んになる。植物が絡みつくような曲線の多様が特徴的だが、トーネットはそれに先んじて1830年代に曲木技術を完成させ、ブナなどの木材を使った曲木家具の量産に成功した。初めて椅子において工業製品化が行われた作品でもある。

1830年に2枚の薄板を用いて、成形合板の研究に着手した。にかわ液で木材を煮て曲げ加工を行った。その後、水蒸気の作用を応用して無垢材を曲げる曲木家具の開発へと進んでいく。ネジで留める接合法を開発し、59年にNo.14の誕生へと結びつく。

また、6つのパーツに分かれているノックダウン方式であるためにコストが抑えられ良質な椅子が多くの人のもとに届くことになります。また、使用するうちに不具合が出た場合にもパーツ交換でも対応できるデザインである。それがこれまでに約2億脚というセールスにつながっている。

発表から150年以上経った現在も愛され続ける名作椅子は、さらに背もたれのパーツ変更などでバリエーションがつけられ、現在もリプロダクトも数多く行われている。

 

   

ワシリーチェア

マルセル・ブロイヤー

1925年 ノル

 

 

出典
最終アクセス 2020.11.26

 

 

スチールパイプの加工性と張地の張力を利用して製作された椅子。

バウハウス」という総合造形学校で育った、マルセル・ブロイヤーによる椅子である。18世紀後半に産業革命を経て大量生産が実現するようになったが、弊害として起こった品質の低下を受けて、19世紀末に再び手仕事を大事にしようという動きが「アーツアンドクラフツ運動」として巻き起こる。この動きは20世紀初頭にかけて、ヨーロッパ全体に波及していくが、急速に経済が発展するドイツにおいて潮目が変わる。そこで手仕事と機械の融合を目指す流れを汲み、講義中心の予備課程、工房での作業課程、量産のためのデザインなどのカリキュラムが行われる「バウハウス」が開講する。

この椅子は、長い期間変更されずに使われ続け、巧みに曲げられたスチールパイプでできた自転車をインスピレーション源としている。また、曲げ加工は上記したトーネットが開発した曲木技術からヒントを得ている。重厚感のある木製の4本脚が主流の当時、素材、加工に対する知識と技術を十分に発揮し、軽快にスチールパイプを用いたこの椅子が評価されることはなかったが、結果として20世紀のデザイン史に名を刻むこととなる。

   

  

ヨーデボリ , 1

エリック・グンナール・アスプルンド

1937年 カッシーナ

 

 

 

 

優雅なアーチ状の背もたれと、緩やかなカーブを描く脚は、トーネットに通ずるクラシシズムを感じさせる。背もたれのレザーの貼り方や、脚の間の貫を目立たなくするなどさらに洗練された印象もある。

1940〜50年代の北欧デザインは黄金期とも呼ばれる時代を迎える。スウェーデンのエリック・グンナール・アスプルンドはその黄金世代に直接的または間接的に影響を与えた第一世代のなかの1人で、黄金世代にあたるアルネ・ヤコブセンや、アルヴァ・アアルトもしばしばアスプルンドのもとを訪れたと言われている。「森の墓地」や「ストックホルム市立図書館」などが現在も世界中の建築家を惹きつける作品だが、この椅子は晩年の「ヨーデボリ裁判所(1937年)」のためにデザインされた椅子である。北欧独自の風土性や民族性から感じられる温かさと、ヨーロッパを席巻したモダニズムが融合した傑作である。

 

 

 

 今回はトーネットのNo.19をはじめ曲木の要素をもつ椅子を紹介しました。

  

 

参考文献

『ストーリーのある50の名作椅子案内』スペースシャワーネットワーク

『インテリアコーディネーター1次試験合格教本第11版下巻』ハウジングエージェンシー出版事業部