落とし物ミッション

落とし物ミッション

ふと、人間の良心が試されている出来事が起こる。

 

たとえば、歩いている人がハンカチを落としたり、横断歩道にお守りが落ちていたり、ベビーカーから靴下が落ちたり。そのような場面になると、「ミッションスタート!」とRPGゲームのように頭の中で合図が鳴り、瞬時に拾って渡す。これは、きっと神様から与えられた試練なのだろう。

 

この前は、学生のものであろう定期券が落ちていた。場所は駅から15分ほど離れた住宅街の道路。しかも、ケースに入っていない定期券。帰路を急いでいて、素通りすることもできたけれど、「定期券はマズいよなぁ」「というか、どうしたらそんな落とし方をするの?」「むしろ、今まで通りがかった人はなんでそのままにしているのだろう」と考えたら気になってしまい、駅に届けることにした。

 

誰でも、落とし物をしたことは一度あると思う。それがパーソナルなものに近いほど、焦り、困る。その気持ちがわかるから、知らない相手でもどんな状況かを想像できる、人間の共感する力が発揮される。けれど、ハンカチや手袋のようなモノが落ちていた場合、それをだだの物体としてしか見ていないだろうか。

 

モノは売られていた時よりも、価値が上がっていくと思う。持ち主の想いが宿されるからだ。
もしかしたら、プレゼントでもらったもの、仕事がうまくいって自分のご褒美に買ったもの、幼い頃から使っていたものかもしれない。真実はわからないけれど、思い出が詰まったかけがえのないモノで必死に探しているかもしれないと思うと、できるだけ持ち主に戻ってほしいと願う。

 

だから、見つけたら、そっと段差の上や道の端に置き直すような小さなことでも、人の助けをしていると思う。ただ、ミッションはいつ起こるかわからないから、周囲を伺いながら、今日も歩いている。

 

Yuka.N