北欧家具のベースを作った偉大な祖アルネ・ヤコブセン

北欧家具のベースを作った偉大な祖アルネ・ヤコブセン

北欧家具のデザインはシンプルで温かなイメージがあり、今なお世界中から愛される普遍的な魅力を持ちます。


実は北欧家具の方向性を決めたともいえるのがデンマーク出身のデザイナー、アルネ・ヤコブセンなんです。彼は「デンマークデザインの父」といわれ、北欧デザインの原型を作り上げました。


彼がデザインした家具や建築は、寒い北欧の地でもぬくもりを感じることができ、人々の生活に安らぎを与えるものばかりです。


とりわけ彼が作った椅子は、カフェやレストランなど私たちの日常のあらゆる場面で使われています。


なぜそこまで彼の作品が今もなお人々の生活に馴染んでいるのか、その謎を解明しましょう。

 

画家になるのを反対され建築家を歩んだアルネ・ヤコブセン

アルネ・ヤコブセンは元々画家志望で夢や希望に満ちた青年でした。しかし彼は両親の反対もあり画家になることは諦め、その代わりに両親と友人の勧めに従って建築家の道を歩むことにしたのです。

 

その後彼は、画家への未練などありながらもどんどん技術を身につけていきました。そして彼はミース・ファン・デル・ローエやチャールズ&レイ・イームズ夫妻などのデザイナーの影響を受けながら、世界に称賛される建築物や家具を発表し続けました。

 

彼は椅子をはじめ、ランプやカトラリーなどの家具雑貨、集合住宅や様々な地域の市庁舎、SASロイヤルホテルや国立銀行など、実に多種多様な建築物を世に排出し、彼の功績を称え、たくさんの国際的な賞に輝いています。

 

絵の才能を活かせる建築家の道へ。若いながらも数々の受賞

アルネ・ヤコブセンは1902年にデンマークの首都、コペンハーゲンで産声を上げました。

 

彼の父は安全ピンやファスナーを取り扱う卸売業の仕事をしていて、母は銀行で働く一般的な家庭で育ったのです。

 

彼の将来の夢は画家になることでしたが、両親から反対されたため19歳で家を出ました。その後彼は、客船の乗務員として働くものの、船酔いに悩まされてすぐに辞めてしまいます。

 

やむを得ず実家に戻った彼に母が建築家の道を勧めました。

 

それは母だけではなくアルネ・ヤコブセンの友人であるフレミング・ラッセンからも彼は建築家の道を推薦されたのです。

 

それでも画家への道を諦めきれなかったアルネ・ヤコブセンは、絵の才能も活かせるデンマーク王立美術アカデミーの建築学科に不本意ながらも入学することに決めました。

 

彼はそこで建築の魅力を少しずつ理解し、1925年に開催されたパリ万博博覧会に当時まだ学生でありながらも椅子のデザインで銀メダルを受賞したのです。

 

彼はデンマーク王立美術アカデミーを卒業する前にドイツに旅行に行き、ミース・ファン・デル・ローエとヴァルター・グロピウスの偉大な建築家の作品を目の当たりにし、大きな影響を受けました。

 

その結果として、卒業プロジェクトで金賞を獲得することに。そこからアルネ・ヤコブセンの壮大なドラマが始まります。

 

偉大なる先人やライバルからのインスピレーション

 

アルネ・ヤコブセンは「過去の建築には必ずヒントがある 現代の建築にも盗むべきものがある」という言葉を残しています。

 

その言葉通り、彼はチャールズ&レイ・イームズ夫妻が手掛けたシェルチェアの成型合板のアイデアにヒントをもらい、セブンチェアをデザインしました。セブンチェアについては後に詳しくご紹介しますが、アルネ・ヤコブセンは色んなものにインスピレーションを受けて作品作りをしているのだと分かる言葉です。

 

そしてアルネ・ヤコブセンの手掛ける作品は、空間づくりに対する圧倒的なこだわりがあり、インテリアから家具まで統一した建築デザインであることがわかります。

 

コペンハーゲンの「ベラヴィスタ集合住宅」もアルネ・ヤコブセンが手掛けました。1934年にデザインされたシンプルでモダンな集合住宅です。それはアルネ・ヤコブセンらしい建築物でありながらも、ミース・ファン・デル・ローエの影響もあるといわれています。

 

様々な機構が盛り込まれた未来の家

アルネ・ヤコブセンは幼馴染であり同じ建築家を志すフレミング・ラッセンと二人で何か作品を作ってみないかという話で盛り上がっていました。

 

タイミング良くその頃『コペンハーゲン家具職人ギルド展』で「未来の家」というコンセプトでの設計コンペティションを募集していたのです。

 

これに二人も設計した作品を応募したところ、めでたく優勝を勝ち取ることができました。

 

アルネ・ヤコブセンとフレミング・ラッセンが共同で作った「未来の家」の作品は、ガラスとコンクリートのらせん状の平らな屋根の家で、玄関にはホコリを吸引する玄関マットがあります。

 

それだけではなく自動でシャッターが開け閉めする車庫や、自家用ボートのための水上ガレージ、屋上にはヘリコプターの発着台まで取り付けたのです。

 

この非の打ち所がない、あらゆる機能を兼ね備えた家はまさに「未来の家」のコンセプトに合致する素晴らしい作品でした。

 

彼らが優勝した後すぐにアルネ・ヤコブセンとフレミング・ラッセンの名は広まりました。

 

アルネ・ヤコブセンのもとには住宅設計の依頼も数多く来るようになり、それを機にアルネ・ヤコブセンは個人事務所を立ち上げたのです。

 

アルネ・ヤコブセンの代表作2つ

アルネ・ヤコブセンがブレイクしたきっかけは建築業でしたが、家具のデザイナーとしても活躍し、今もなお世界中で愛される北欧家具を発表しました。

 

二足のわらじでたくさんのデザインを世に生み出したアルネ・ヤコブセンの有名作品をご紹介いたしましょう。

 

セブンチェア

セブンチェアは座る面と背もたれの面が一体成型で、くびれの曲線が美しいデザインのおしゃれなチェアです。このチェアは600万本以上販売していて、世界で最も販売台数が多い椅子といわれています。

 

単純なデザインでありながらもぬくもりを感じられるような優しい椅子で、カフェやレストランなどで見かけた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

これほどまでに世界中で愛される椅子は存在しません。

 

そんなセブンチェアですが、チャールズ&レイ・イームズ夫妻が手掛けた成形合板にインスピレーションを受けてデザインされました。

 

このチェアは1955年にデザインされて以降、フリッツ・ハンセンの独占生産です。



エッグチェア

エッグチェアはコロンと丸みを帯びている椅子で、その形は卵そのものです。

 

この可愛らしいチェアは1958年にコペンハーゲンのホテル『SASロイヤルホテル』のためにスワンチェアとともにデザインされたチェアです。

 

そしてこのエッグチェアの最大の特徴は、新素材の発泡硬質ポリウレタンを使用して、曲線で構成されたシェル構造のデザインを考え抜いて作り上げたということでしょう。

 

エッグチェアは人を温かく包み込むような作りと色合いでできています。その色合いも派手で華やかというよりも、質素だけど部屋に馴染みやすい愛着の湧くような配色。

 

ちなみにアルネ・ヤコブセンがこの『SASロイヤルホテル』を手掛けた際、チェアだけでなく建築の設計、照明やドアノブ、そして食器類まで一貫したデザインにするというこだわりを持っていました。

 

そこにはアルネ・ヤコブセンのデザインに対する信念さえもうかがえるでしょう。

 

大変な時代を乗り越えたアルネ・ヤコブセン

アルネ・ヤコブセンがデンマークにある自身の事務所で仕事に励んでいた頃、アルネ・ヤコブセンを取り巻く政治的な環境はあまり恵まれた状況ではありませんでした。

 

1940年にナチスドイツによってデンマークが占領されると、ユダヤ人であるアルネ・ヤコブセンはナチスの迫害を恐れたのです。

 

その結果1943年にアルネ・ヤコブセンは自身の事務所を去って、ユダヤのデンマーク人たちとともに小さなボードを漕いでスウェーデンへ亡命しました。このボートのメンバーには照明デザイナーのポール・ヘニングセンもいました。

 

第二次世界大戦が終結するまでアルネ・ヤコブセンは約二年間スウェーデンに亡命していましたが、その間の設計活動はほとんど進みませんでした。

 

その代わり彼の妻マリー・イストラップ・ホルムと離婚し、ヨハナと再婚します。そしてアルネ・ヤコブセンとヨハナはテキスタイルデザインを手掛けるなどしていました

 

そんな激動の日々を過ごしてデンマークに戻ったアルネ・ヤコブセンは、とどまることなく家具デザインや建築物をどんどん発表。

 

ナチスによる迫害がなければ、戦争のない平和な環境下であれば、この間にも生み出されていたおしゃれな家具や建築物もあったことでしょう。

 

アルネ・ヤコブセンの戦争によって心に傷を負った痛みははかりしれませんが、それでも前を向いて戦後もひたすら世にデザインを生み出し続けたのは称賛に値するはずです。

 

まとめ

今回は「デンマークデザインの父」とも呼ばれるアルネ・ヤコブセンの魅力的な作品、そして彼の歩んだ歴史について深く掘り下げていきました。

 

彼の作品作りでは先人に学び、身近なものからフィーリングを受けてデザインする、という職人魂も垣間見ることができたでしょう。

 

彼が手掛けたエッグチェアやセブンチェアが今でも世界のあらゆるところで見かける理由が垣間見えたかと思います。

 

彼が生み出した愛らしい家具雑貨とは反対に、『コペンハーゲン家具職人ギルド展』の「未来の家」では画期的なアイデアがふんだんに練りこまれ、想像するだけでワクワクするような家を完成させたのです。

 

夢見た画家にはなれず、他国に亡命しなければならない歴史的状況に苦しめられ、様々な苦労を経験したアルネ・ヤコブセンですが、そんな苦労を感じさせないほど愛情のこもった家具や建築物を残しました。

 

そんな家具や建築物を、アルネ・ヤコブセン亡き今も世界中のたくさんの人が使っているのです。それはとても素敵なことではないでしょうか。

 

【参考URL】

・H.L.D. online store:アルネ・ヤコブセンの思想

https://hld-os.com/html/page46.html

 

・ハッシュカーサー:北欧デザインの巨匠、北欧のインターナショナルスタイルを創生した「アルネ・ヤコブセン」

https://hash-casa.com/2021/04/09/arnejacobsen/

 

・cozy life:建築家の顔も併せ持つアルネ・ヤコブセン|歴史や功績、北欧家具の代表作を紹介

https://timberyard.net/cozylife/connect/arne_jacobsen/#i-9

 

・Wikipedia:アルネ・ヤコブセン

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%8D%E3%83%BB%E3%83%A4%E3%82%B3%E3%83%96%E3%82%BB%E3%83%B3#%E5%AE%B6%E5%85%B7

 

・デザイナーズ家具通販専門店 ユアデザイナーズ:アルネ・ヤコブセン

https://www.your-designers.com/jacobsen.html

 

・インテリアのナンたるか:アルネ・ヤコブセンとは?その経歴と椅子や照明の代表作品も画像でマジ解説

https://interior-no-nantalca.com/arne-jacobsen/

 

・新潟で活動する建築デザイン事務所|金子勉建築設計事務所:アルネ・ヤコブセン設計 ベラヴィスタ集合住宅を訪れて

https://kaneko-archi.com/2010/08/21/berabisuta/

家具の商品