今さら聞けないヴァーナー・パントン。独特な世界観は常識を破壊

今さら聞けないヴァーナー・パントン。独特な世界観は常識を破壊

ヴァーナー・パントン(ヴェルナー・パントン)は、S字の形が特徴的でファッショナブルなパントンチェアが有名です。その奇抜なデザインから一見するとアメリカやイタリア出身のデザイナーに見えますが、実は温かみのある北欧家具が主流の国、デンマーク出身のデザイナーです。


作品が発表された当初は、彼の魅力はあまり評価されず、苦労を重ねてたくさんの芸術的な家具を生み出しました。


ではなぜ、ミッドセンチュリーを代表する椅子ともいえるパントンチェアのような名作を次々とデザインすることができたのでしょうか。


今回はヴァーナー・パントンに焦点を当てて、彼のバックグラウンドや渾身の作品の数々をご紹介します。

 

インテリアの常識を覆した異端児 ヴァーナー・パントン

ヴァーナー・パントンは、デンマーク出身の家具およびインテリアデザイナーです。

彼は異端児ともいわれ、北欧家具全盛期の中で一風変わったポップで家具の常識を覆すかのような作品を多く生み出しました。 

ヴァーナー・パントンは思うように自分の作った作品が評価されない時期も経験しました。それでも彼は、一貫してエキサイティングでユーモア溢れる作品作りに勤しんだのです。その苦労の結果、今でも世界に認められるデザイナーとして評価されています。

彼の作品の中でも代表的なものをチェアに絞って挙げると、その名の通り可愛らしいフォルムが特徴のコーンチェア、ワイヤーとクッションという特殊な組み合わせで作られたワイヤーコーンチェア、それから遊び心満載のパントニックチェアなどがあります。

そして家具だけでなく、空間をもあわせてデザインしたのが「ファンタジーランドスケープ」です。そこは非日常的で、異世界にいるような空間を体験できます。

ヴァーナー・パントンの制作した作品は発売から50年以上経つものばかりですが、時代遅れな印象を持つものはなく、今なお目新しくて彼の作品を見る人みんなの興味をそそるようなものばかりです。

 

型破りな発想と鮮やかな色使いが人気の作品を生む

ヴァーナー・パントンは1926年2月13日にデンマークのゲントフテで生まれました。

 

デンマークは九州地方と同じような広さの国で、世界幸福度ランキングで常に上位にランクされています。

 

かなり高い税金を支払わなければいけない分、教育費や医療費、出産費などが国から補助されます。さらには職業による収入の格差なども少ないため、個人に合った職業に就くことができ、学歴で評価されることもありません。

 

そういった意味でヴァーナー・パントンは非常に恵まれた国で育ったのです。

 

彼はオーデンセテクニカルカレッジを卒業後、コペンハーゲンにあるデンマーク王立芸術アカデミーで建築学を習得しました。ちなみにデンマーク王立芸術アカデミーは絵画、彫刻、建築、写真、映像芸術の教育や研究を専門に行う学校です。

 

その後、同じデンマーク出身のアルネ・ヤコブセンの事務所で働き、同僚のポール・ヘニングセンらとともにデンマークのデザインについて学びました。

 

しかしヴァーナー・パントンは同僚らから異端児として扱われ、わずか2年でアルネ・ヤコブセンの事務所を後にします。

 

その後も彼はデザインの道から外れることなく、自身のデザイン事務所を設立して家具や空間デザインなどを生み出しました。

 

ヴァーナー・パントンの独創的なセンスが光り、型破りなデザインで鮮やかな色使いが特徴の作品が続々と発表されたのです。

 

エキサイティングで遊び心のある創作家

ヴァーナー・パントンは「私の仕事の主たる目的は、人々にもっとイマジネーションを行使するよう強いることなのだ。人々の多くは、グレーとベージュで味気ない日々をおくり、色を使うことを死ぬほど恐れている。ライティング、カラー、テキスタイル、家具、そして最新のテクノロジーを使った実験で、わたしは新しい方法を示したい。人々がファンタジーとイマジネーションを使い、生活環境をもっとエキサイティングなものにするように励ましたい。」と語っています。

 

彼の作品はまさにその言葉通りで、独自性があり、近未来的で華やかなデザインです。この類を見ないデザイン性の高い作品は人々を圧倒し、ヴァーナー・パントンのファンを多く集めました。

 

彼の作品に保守的なものはなく、一貫してエキサイティングで遊び心のあるものばかりで、現代でも多くの人を虜にしています。

 

代表作パントンチェアは20年もの歳月で誕生

ヴァーナー・パントンはパントンチェアを1967年に発表し、以降このチェアは世界で爆発的な人気を誇りました。

 

しかしこの椅子は簡単に生み出されたものではなく、構想から制作、発表まで合わせて20年以上もの熟考を経て出来上がったのです。

 

パントンチェアは制作当初はSチェアと呼ばれていて、その名の通り椅子を横から見るとS字の形を模しています。カラーバリエーションも豊富でポップでユニークなデザインが特徴的です。

 

プラスチックを使った一体型成型で作られているため、S字のカーブも美しい曲線を描いています。

 

北欧というと木で出来たぬくもりのある作品が思い浮かぶと思いますが、ヴァーナー・パントンはそういった伝統的な技法が好きではなく、安価で自由自在にデザインできるプラスチックを使ったのではないかともいわれています。

 

発売した頃はFRP素材が採用されていましたが、1999年には環境に配慮してポリプロピレン製でリデザインされました。

 

世界中をも魅了したパントンチェアはミッドセンチュリーを代表する名作椅子として今もなお高い評価を得ています。

 

ヴァーナー・パントンの代表作3つ

ヴァーナー・パントンは20世紀を代表する椅子のひとつであるパントンチェアだけでなく、北欧家具らしからぬ奇抜なデザインの作品を数多く生み出しました。ではそんな作品をいくつかみていきましょう。

 

ムーンランプ

1960年にヴァーナー・パントンは月の満ち欠けを想起させる幻想的なデザインのムーンランプを発表しました。

 

中央に支柱があり、そこを起点にサイズが一枚ずつ異なるリングの位置をずらしながら重ね合わせて取り付けられています。

 

可動式なリングは、そこから漏れる光も作り出す陰影も、様々なシーンに合わせて部屋を幻想的に照らし、部屋にあるだけでいつでも寛ぎの空間を演出することでしょう。

 

寝室に置けば就寝時のリラックスタイムに最適です。

 

アムーベ

アムーベは、緩やかな曲線を描く背もたれと身体を包み込むような分厚いクッションが特徴的なラウンジチェアです。

 

このラウンジチェアは1970年に開催されたケルン家具見本市での展覧会「Visona 2」展のためにデザインされたもので、とても柔らかくてしっかりとしたクッションなため、そのまま身体をチェアに身を委ねる座り方がおすすめ。

 

ポップな色合いでおしゃれでありながらも場所を選ばずに使用できるのが魅力で、オフィスや自宅など様々なシーンで活躍します。

 

カラーバリエーションも豊富なため、様々な色を選んで並べることもひとつの楽しみ方でしょう。
 

コーンチェア/ハートコーンチェア

このコーンチェアはその名の通り、とうもろこしの粒を模したような愛らしいデザインです。

 

コーンチェアが制作されたきっかけは、ヴァーナー・パントンの両親が経営するデンマークのレストランで使用するためです。

 

1958年に制作されて以降、様々なカフェやサロンでも愛用されてきました。

 

おしゃれなだけではなくステンレススチール製の脚の部分は回転でき、背もたれと座る部分のクッションも肌触りが良いため長時間座っていても疲労がたまることはありません。

 

ラグジュアリーなお店にもよく馴染む高貴なデザインで、ヴァーナー・パントンがお店に調和するように入念に考えられた作品といえるでしょう。

 

また、背もたれがハートの形をしたデザインのハートコーンチェアも魅惑な作品です。

 

ファンタジーランドスケープの発表には2万4千人が押しかける

1970年にヴァーナー・パントンは床と壁、天井を一体化させた近未来的な空間「ファンタジーランドスケープ」をケルン家具見本市での展覧会「Visona 2」展で展示しました。有機的な造形と鮮やかな色使いがマッチして、近未来をイメージさせるような空間です。

 

この画期的で伝説のインテリアを、ドイツにあるヴィトラ・デザイン・ミュージアムが国際巡回展のために再現しました。

 

この展示会はライン川に浮かぶ船の内部で開催され、四日間で来場者数は約2万4000人を超えたのです。

 

「Visona 2」展は「未来のインテリア」がコンセプトで、「ファンタジーランドスケープ」はまるで洞窟の中にいるような魅惑の空間であり、海底の奥底にいるかのような神秘的な雰囲気も漂っています。

 

まとめ

今回はミッドセンチュリー期を風靡したデザイナー、ヴァーナー・パントンについて深堀していきました。

 

彼は非常に作品作りの信念が強くあり、自国の伝統に流されることなくヴァーナー・パントンらしい個性的な作品を生み出したのです。

 

当初、彼の作品は異質だと見なされていましたが、彼の努力の結果、展示会を開催した時には2万4000人をも動員するほど彼の作品は認められ、愛されるようになりました。

 

ヴァーナー・パントンが作り出した作品は、どれも奇抜でありながらも見る人の心を躍らせ、生活に彩りを添えてくれるようなデザインです。その作品の中には、真のデザインの面白さが込められているでしょう。

 

 

【参考URL】

・ヴェルナー・パントン/ConeChairコーンチェアリプロダクト

https://www.nsb-relaxingroom.com/?pid=56874215

 

・Mid-Century MODERNオンラインショップ:K1 Cone Chair / Vintage

https://mid-centurymodern.com/?pid=159430652

 

・H.L.D. オンラインストア:Amoebe

https://hld-os.com/shopdetail/000000000430/

 

・permanent design shop:ヴェルナー パントン ムーンランプ

https://www.classics-permanent-design.com/panton_moonlamp_wh.html

 

・家具・インテリア・オフィス家具の通販サイト MAARKET マーケット:MOON

https://maarket.jp/products/detail/993#PI

 

・High-Brands.com:Verner Panton ヴェルナー・パントン

https://high-brands.com/interior-brand.php?id=119

 

・Wikipedia:ヴァーナー・パントン

https://en.wikipedia.org/wiki/Verner_Panton

 

・HAPSENT:いろいろなデザイナーVol.13 ~ヴェルナー・パントン~

https://www.hapsent.com/blog/furniture/verner-panton/

 

・エルラインジャーナル:デンマークの有名デザイナー「ヴェルナー・パントン」の家具を高く売るためのポイント、人気作品を紹介!

https://www.l-interior.jp/journal/verner-panton-2306

 

・Vitra.:ヴァーナー・パントン

https://www.vitra.com/ja-jp/about-vitra/designer/details/verner-panton

 

・ルイスポールセン公式プロフェッショナル向けサイト:ヴァーナー・パントン

https://www.louispoulsen.com/ja-jp/professional/about-us/designers/verner-panton

 

・とりあえず家具:Verner Panton(ヴェルナー・パントン)について

https://kagu.tokyo/entry/panton-2018-04-17

 

・北欧ミッドセンチュリーの家づくり:パントンチェアのヴェルナー・パントンに学ぶ自分らしく夢を叶える方法

https://www.mashley1203.com/entry/2017/11/29/001207

 

・ツイスト:デンマーク家具の歴史!デンマーク出身のデザイナーと共に

https://twist-design.life/nordic-design/danish-furniture

 

・Na2@Danmark:パントンチェアの生みの親「ヴェルナー・パントン(Verner Panton)」。

http://na2dk.blog.fc2.com/blog-entry-153.html

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