今さら聞けないエーロ アールニオ。遊び心満載のモダンデザイナー

今さら聞けないエーロ アールニオ。遊び心満載のモダンデザイナー

ボールチェアをデザインしたことで知られるエーロ アールニオは、遊び心あふれるポップなモダンデザイナーの代表です。ボールチェアは、まるい球体の断面をくり抜いたようなデザインで、中にすっぽり座れる構造になっています。


彼のインパクトある作品の数々や、彼が歩んできた人生について詳しくみていきましょう。

 

世界中のセレブを虜にするエーロ アールニオ

エーロ アールニオは彼の代表作ともいえるボールチェアをはじめ、様々な椅子を手掛けてきました。中でもボールチェアは、世界中の大統領やセレブなど、著名人も虜になるくらいなので、世界中で愛されています。


街中では、ボールチェアは、ホテルやオフィスのロビーに置かれていることが多く、一度座ったら忘れることができないくらい極上の癒し空間を体験できることでしょう。


そんなボールチェアをはじめ、彼が生み出した椅子のどれをとっても共通でいえるのは、座り心地の良さを突き詰めたということです。


単に座るだけの椅子ではなく、精神的にもリラックスでき、まるで宇宙の中にいるような究極の寛ぎを体感できます。



デザイナー エーロ アールニオが有名になった理由

エーロ アールニオは今となっては、世界屈指の指折りのデザイナーとして認知されています。ではなぜ、そこまでのぼりつめることができたのでしょうか。その理由について迫っていきます。

 

エーロ アールニオが歩んできた歴史

1932年サウナ文化で有名なフィンランドの首都ヘルシンキでエーロ アールニオは産声を上げました。


小学生の時には、彼は絵を描くのが好きで、先生からも良い評価をされていました。


また、10歳年の離れた兄のジャリが幼少期から芸術的な才能があり、学校新聞の表紙にジャリの写真が載りました。それを誇りに思った彼の両親が、家の壁にその写真を何年も飾ったのです。エーロ アールニオのロールモデルは、ジャリだと彼自身語っています。


そして彼は1954年から1957年にかけて、ヘルシンキ工科大学で工業デザインとインテリアデザインを習得しました。


1956年にはピルッコ アッティラと結婚し、二人の間に子供を授かったのです。


1962年にはヘルシンキでデザイン事務所を設立し、翌年の1963年にはボールチェアを生み出しました。その後に発表した1967年のパスティルチェア、1968年のバブルチェアはいずれも大ヒット作品で彼の勢いはとどまることなく、次々と魅力的な家具や雑貨を発表したのです。


芸術家一族


エーロ アールニオは芸術家一族です。


兄のジャリは、水彩画家として華々しい活躍をしていますし、一方、母は靴屋で、靴を縫う仕事をしており、フィンランドの偉大なオペラ歌手の靴を手掛けたこともあるそうです。それだけではなく、父も仕事で壁紙を作っていました。


エーロ アールニオの父よりも母の方が芸術への関心があったようですが、このような家庭に生まれ育ったことは、彼の人生に多大な影響を及ぼしていることでしょう。



エーロ アールニオの作品と特徴


エーロ アールニオが生み出した作品は、従来の家具や雑貨の概念を覆すようなデザイン性の高さが特徴です。


彼の作品であるボールチェアやバブルチェアは、素材に忠実になって形を考え抜いた結果、完成できました。


彼が世間の注目を集める作品を次々と生み出せたのは「自身が手掛けた一番新しい作品が自分の最高傑作である」という精神を貫いているためです。


その奥には、製品に込められた内的な価値を生産すべきという、強い思いがあります。


作品づくりへの情熱があるからこそ、2020年代になってもなお、現役で活躍しつづけているのでしょう。



当初は批判も多かったボールチェア。遠く離れたアメリカで脚光


エーロ アールニオがボールチェアを皮切りにパスティルチェア、バブルチェアを発表した当時は「そんなものいったい誰が使うの?」という批判もあったそうです。


しかしそんな1960年代は、アメリカでは『ザ・ローリング・ストーンズ』やヒッピーカルチャーなど、先駆的なアメリカンポップカルチャーの絶頂期でした。


そのため、エーロ アールニオの型破りで遊び心のある作品は、アメリカの人々に関心を集めました。彼が最初に人気を集めた国は、フィンランドではなく、アメリカだったのです。


そしてボールチェアは、1966年のケルン国際見本市をきっかけに脚光を浴びるようになったのです。



エーロ アールニオの代表作3つ


エーロ アールニオが世に広めた作品は数多くあります。そしてそのどれもが、今でも親しまれているものばかりです。では、そんな彼の代表的な作品を一つずつ詳しくみていきましょう。



ボールチェア


ボールチェアは近未来的な球体状の椅子です。そこに腰掛けるだけで、自分の世界が広がるかのような極上の座り心地を体験できます。


そんな画期的なデザインの椅子ですが、実は、当時のエーロ アールニオの自宅に大きな椅子がなかったため制作したのがはじまりです。


この椅子は、座るだけで周囲の音を70%も遮断します。現代ではノイズキャンセリング機能つきのイヤホンもありますが、この椅子自体が遮音性能に優れているため、わざわざイヤホンをつけて耳に負担をかける必要もありません。


中の生地は、あたたかくやさしく包み込むような触り心地のよさが特徴のカシミア混合ウールを使用。クッション性の高さも特徴で、中の生地の色の配色は八色あり、カラーバリエーションも豊富です。


一方、表面は繊維強化プラスチックという、軽さと強度の高さが特徴の素材で作られています。


そのデザイン性と機能性の高さにより、1966年のケルン国際家具見本市で最高評価を受け、MoMA(ニューヨーク近代美術館)などで永久展示品に選定されました。



ハーフドームチェア


まるでお茶碗のような見た目のハーフドームチェアは、それが部屋に置いてあるだけで芸術作品が飾られているような印象を与えます。


陶器のようなツルツルした椅子の表面の素材は、繊維強化プラスチックです。そしてゴージャスな輝きを放つクッション部分は、牛革でできているのです。


その目新しい組み合わせは世間を驚かせ、ボールチェアに続いて一気にエーロ アールニオの名が世に広まったのです。


また、ハーフドームチェアの特徴として、底面にキャスターが付いているということも挙げられるでしょう。そのため、座ったまま移動することができます。


それだけでなく、家の中のあらゆる場所に移動させることができ、そのシーンに合わせて利用することも可能です。


朝の陽ざしが降り注ぐ室内で新聞を読むとき、キッチンでパスタを茹でている合間に休憩したいとき、リビングでホームシアターを楽しみたいとき。どんなときにも極上の癒しを提供してくれることでしょう。



バブルチェア


ボールチェアに光を取り込みたい、という願いから1968年にまた新たにデザインされたのがバブルチェアです。


個人の空間を味わうボールチェアにうって変わって、こちらは透明なアクリル板で作られているため、開放的で周囲の環境を楽しめます。


まるでシャボン玉の中に入ったかのようなユニークなデザインで、天井からチェーンで吊り下げられているため、その浮遊感も特徴です。


そんな画期的なデザイン性の高さから、映画業界や広告業界からも人気を集めています。




90歳を超えてもデザイナーとして活躍するエーロ アールニオ


2022年にエーロ アールニオは90歳の誕生日を迎えました。


彼は今もなお、デザイナーとして活躍していますが、これまでにも偉大な功績を残しています。さっそく、彼の残した功績を辿っていきましょう。


ボールチェアがディズニーとコラボ


1928年にスクリーンデビューしたミッキーマウスは、2018年11月18日に90周年を迎えました。


それを祝福してディズニーとコラボレーションし、椅子の後ろにミッキーマウスの顔をデザインしたボールチェアが期間限定で発売されました。


エーロ アールニオとミッキーマウス、まさにビックスター同士の夢の共演が実現されたのです。



東京で回顧展『Eero Aarnio Life in Design』が開催


エーロ アールニオは日本でも多くの人々から注目されています。


2014年、東京の六本木、AXISギャラリーで『Eero Aarnio Life in Design』が開かれました。この展示会に合わせてエーロ アールニオの作品集も発売されたのです。


エーロ アールニオというと、色鮮やかでポップなデザインをイメージする方も多いことでしょう。


しかしこの展示会では、すべて真っ白の作品で統一されていたのです。色の概念を一切なくし、そのフォルムをしっかり楽しめるようになっていたのです。


そのうえ、椅子にはすべて自由に腰掛けることができたので、五感でエーロ アールニオの作品を堪能することができました。


エーロ アールニオの作品は敷居が高いからなかなか手が出ないと思っていた方も、このような展示会で気軽に彼の作品に触れあうことができる素晴らしい機会でした。



まとめ


海を越え、日本でも愛されるフィンランドの巨匠、エーロ アールニオの作品の魅力について深堀していきました。


彼の大胆でユーモアたっぷりのアイデアは、今もなお世界中を魅了しているのです。


ボールチェアやバブルチェアなど、名だたる名作を世に生み出した彼は、幼いころから創作への情熱があり、素材を活かした作品づくりをするということに、誰よりもこだわっているのです。


今日ではメディアをはじめとする日常生活の中でも、彼の作品を目にする機会が増えてきました。


空間をもデザインする彼の作品の数々に触れるときがきたら、その奥にあるヒストリーを想像してみてはいかがでしょうか。

 

 

参考サイト

・ボールチェア│名作デザイナーズ家具のインテリアショップ METROCS 公式オンラインストア(https://metrocs.jp/item/263/)

・Artek - エーロ・アールニオ(https://www.artek.fi/jp/company/designers/eero-aarnio)

・Eero Aarnio(エーロ・アールニオ) | 【H.L.D オンラインストア】[正規品] デザイナーズ家具・ブランド家具・北欧家具 通販 (hld-os.com)

・vol.53 エーロ・アールニオ - インテリア情報サイト (interior-joho.com)

・EERO AARNIO | Magis Japan -official homepage-(https://magisjapan.com/designers/detail/1)

・フィンランド - Wikipedia(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89)

・エーロ・アールニオの独創的な世界 - フィンランドの国際デザイナー | ユアデザイナーズ (your-designers.com)

・知っておきたい名作家具(7) エーロ・アールニオの「未来の椅子」(2/3ページ) | ウチコミ!タイムズ | 住まい・賃貸経営 まる分かり (uchicomi.com)

・Half Dome Chair / ハーフドームチェア - Garret Interior (garret88.com)

・2001年宇宙の旅 - Wikipedia(https://ja.wikipedia.org/wiki/2001%E5%B9%B4%E5%AE%87%E5%AE%99%E3%81%AE%E6%97%85)

・ボールチェアでお馴染みの「エーロ・アールニオ」の家具はどこに売るのがベスト?|エルラインジャーナル (l-interior.jp)

・untitled (wordpress.com)

・北欧の名作「ボールチェア」が気になる!おすすめリプロダクト品紹介 | Domani (shogakukan.co.jp)

・僕がたどりついた、 1960年代のカウンターカルチャーとサイケデリックポスターデザインが生まれるまでの時代の魅力 | 投稿一覧 | 株式会社モノサス- monosus inc.(https://www.monosus.co.jp/posts/2016/11/171320.html)

・KJ00008141939.pdf

・エーロアールニオ (eeroaarnio.com)

・バブルチェア│名作デザイナーズ家具のインテリアショップ METROCS 公式オンラインストア(https://metrocs.jp/item/265/)

・エーロ・アールニオ 「ライフ イン デザイン」 (アクシス ギャラリー) |Tokyo Art Beat(https://www.tokyoartbeat.com/events/-/2014%2FED9C)

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