今もなお愛され続ける「イサム・ノグチ」とは一体どんな人?その作品やデザインした家具をご紹介

今もなお愛され続ける「イサム・ノグチ」とは一体どんな人?その作品やデザインした家具をご紹介

20世紀を代表する彫刻家、「イサム・ノグチ」


「イサム・ノグチ」という人物をご存知ですか?


美術館で作品を目にしたことがない人でも、提灯をモチーフにしたAKARIシリーズのランプや、曲線が美しいコーヒーテーブルは、知っている人が多いのではないでしょうか。


イサム・ノグチは、彫刻家造園家作庭家インテリアデザイナー舞台芸術家と多くの肩書をもっており、その活動は多岐にわたります。


そして、「20世紀が生んだ偉大な彫刻家」と呼ばれており、その呼び名から、才能の豊かさや現代に残したインパクトを感じることができます。


そんな多くの肩書をもつイサム・ノグチですが、その作品に対する情熱やアイディアは一体どこから生まれてきたのでしょうか?


イサム・ノグチの生い立ちや代表的な作品、そして、世界を魅了した「AKARIシリーズのランプ」や美しい曲線が印象的な「ノグチテーブル」とよばれるコーヒーテーブルのご紹介など「イサム・ノグチ」の世界を紐解いてみたいと思います。



イサム・ノグチの人生


多彩な才能をもつイサム・ノグチですが、幼少期は孤独感を抱え、幸福であったとは言えない時代を過ごしていたようです。そんな辛い幼少期があったからこそ、自分自身の内面に向き合い、葛藤し、その力が現代の多く残る作品を生み出すことが出来たのではないでしょうか。

イサム・ノグチの人生をご紹介します。


幼少期


1904年にアメリカ・ロサンゼルスで、詩人の野口米次郎とアイルランド系アメリカ人作家のレオニー・ギルモアとの間にイサム・ノグチは、生まれました。


父の米次郎は、18歳で渡米し、放浪生活の後、大学で教鞭をとっていた詩人を志すレオニーと知り合いました。米次郎は、21歳の時、英文で書いた詩文をアメリカの文壇に発表して、間もなく注目される存在となり、ニューヨークで25歳の若さで一躍有名になりました。アメリカと英国で名を馳せ成功した米次郎は、その後、日本に帰国する事になりますが、その時、レオニーはイサムを身籠っており、父親が不在のままレオニーはアメリカでイサムを出産することになりました。


イサムが3歳の時、母レオニーはイサムを連れて日本にいる米次郎に会う為に日本を訪れましたが、レオニーが尋ねた時には、すでに米次郎は日本人の女性と結婚していました。3ヶ月程、正妻のいる家にレオニーとイサムは居候することになりましたが、その後、レオニーとイサムは、二人で神奈川県の茅ヶ崎に家を建て住むことになりました。しかし、米次郎はイサムとレオニーのもとを訪ねることは一切なかったようです。


その後、イサムは地元の小学校に入学するも、アメリカ人と日本人の混血児として、好奇の目で見られ、時にはいじめの対象になったりしていたようです。


一人で日本へ帰国した父との確執、混血児であるから故の日本とアメリカのどちらにも帰属できない孤独感を抱えていました。


青年期


イサムは、13歳で全寮制学校へ進学するために単身渡米します。高校卒業後、コロンビア大学へ進学し医師を目指す一方で、レオナルド・ダ・ヴィンチ美術学校の彫刻家オノリオ・ルオトロに師事し夜間クラスで彫刻を学びました。そこで、イサムは才能を開花させ、入学3か月で個展を開催します。


ここから、彫刻家としてのキャリアをスタートさせることになりました。


その後の活躍


その後、イサムは、パリをはじめ日本や中国、イタリアなど世界各地を旅しながら、各国で得た体験や技術を自身の作品に反映。繊細かつ大胆、伝統的でありながらモダンという独自の作品世界をつくりあげていき、唯一無二の存在となりました。


中でも、20代でパリへ留学し、彫刻の巨匠・ブランクーシと出会ったことは、ノグチの作品に大きな影響を与えました。さらに第二次世界大戦後の日本で、庭園や伝統技術に触れたことも、庭園作品やAKARIシリーズが生み出されるきっかけになったと言われています。


その後の活躍は目覚ましく、1982年に芸術への卓越した生涯貢献に対してエドワード・マクダウェルメダルを受賞。1986年には日本で京都芸術賞、1987年にはアメリカで国民芸術勲章、そして1988年に日本政府からの瑞宝章と、生涯を通して数多くの賞を受賞しています。




イサム・ノグチの代表作品


イサム・ノグチのアトリエは、アメリカ合衆国のニューヨークと香川県高松市牟礼町の2箇所あります。日本にも数多くの作品を残しているので、実際の作品を見ることができます。


日本で見ることのできるイサム・ノグチの作品や作品を見ることができる美術館をご紹介します。

ぜひ一度足を運んでみてください。



モエレ沼公園


イサム・ノグチが基本設計を手がけた、札幌市のモエレ沼公園は観光名所として大変有名です。

公園のシンボルとも言える「ガラスのピラミッド」や、海辺のような「モエレビーチ」、札幌市内を見渡せる「モエレ山」、カラフルな遊具が子どもたちに大人気の「サクラの森」など見どころ満載。公園全体が、イサム・ノグチの「大地の彫刻」になっていて、子供から大人まで楽しむことができる憩いの場として存在しています。


ブラック・スライド・マントラ


札幌の大通公園に設置されたこの作品は、美しいフォルムが印象的な「すべり台」兼「彫刻作品」です。存在感のある黒い姿は、札幌の雪景色にも新緑の季節にも溶け込む調和が意識された作品と言えます。

イサム・ノグチが「子どもたちの尻がこの作品を完成させる」と語っていたという逸話どおり、普段は子どもたちがのびのびと遊んでいます。


平和大橋・西平和大橋


広島の平和公園にかかる平和大橋・西平和大橋は、イサム・ノグチが欄干をデザインした2つの橋で、広島の街の風景に溶け込んでいます。

しかしながら、建設された当時は、斬新なデザインが人々を驚かせ、話題になったそうです。そしてそのユニークな形から、戦後の広島の子どもたちの遊び場になり、今でも多くの人々に愛されています。


イサム・ノグチ庭園美術館


香川県の牟礼町にあるイサム・ノグチ庭園美術館。ここは、この地が未来の芸術家や研究者、そして広く芸術愛好家のためのインスピレーションの源泉になることを強く望んでいた、ノグチの遺志を実現した美術館です。

150点あまりの彫刻作品はもとより、自ら選んで移築した展示蔵や住居イサム家、晩年制作した彫刻庭園など、美術館全体がひとつの大きな「地球彫刻」、あるいは環境彫刻を表現しています。生前の雰囲気をそのままに残すことで、専門的な調査・研究のためのアーカイブ(資料研究空間)として、多くの芸術家も訪れる場所となっています。

イサム・ノグチ自身がこだわり抜いて作り上げた美術館。イサム・ノグチの世界観を存分に味わうことが出来る特別な場所と言えます。


こどもの国


神奈川県横浜市と東京都町田市の境に位置する「こどもの国」は、雑木林をベースにした自然の中に、たくさんの子どもの遊び場が点在している大きな公園です。

イサム・ノグチは、1965年8月、米国から招かれ来日し、こどもの国設計集団に参加しました。

じどうセンターの周辺にイサム・ノグチの作品群(エントランス通路、丸山、オクテトラ)があります。

当時、新聞のインタビューに対し、イサム・ノグチは「(こどもの国に)30年の設計の体験をすべて生かした。子供の遊び場には自然を残し、自然を生かさなければならない。遊んでいて心のたかぶりを覚えるようなものをつくりたい、という私の夢を実現した」と語りました。

日常の遊び場にアートを持ち込み、非日常空間を演出し、こどもたちに夢を与える遊具彫刻をめざしたイサム・ノグチ。今も残る作品群を見ることでイサム・ノグチの思いを受け取ることが出来るのではないでしょうか。




イサム・ノグチがデザインした家具や照明


多彩な肩書をもつイサム・ノグチですが、家具や照明のインテリアデザイナーも努めています。なめらかな曲線と非対称が美しいイサム・ノグチの家具は、アート作品と呼べるほど。

彫刻のような美しいフォルムとどこに配置しても絵になるソファやテーブルは、イサム・ノグチと同様に唯一無二の存在となり、独特の空間を演出することができます。

イサム・ノグチがデザインをした家具や照明をご紹介します。現在も販売されているので、気になる物があれば購入することも可能です。


AKARI


35年に渡って200種類以上も制作した「AKARI」シリーズは、岐阜提灯をモチーフにデザインされたランプです。

イサム・ノグチは、「AKARI」を単なる提灯として捉えておらず、「光の彫刻」だと考えていたと言われています。

和紙の柔らかい光と優れたデザイン性は、和洋さまざまなインテリアに調和。現在も製造・販売されているので、お部屋にアート作品を取り入れたい方におすすめです。



ノグチテーブル


イサム・ノグチ本人が、最高のデザインと認め、細部にまでこだわった「ノグチテーブル」。角の丸い強化ガラス、脚も硬くて耐久性がある無垢アッシュ材を使って作られ、硬い素材で作り上げられているにも関わらず、滑らかな曲線美があり、まるでオブジェのような存在感を放つ美しいテーブルです。

脚の形も特徴的で、互いの形を非対称にひっくり返したようなデザインをしています。まさに彫刻家イサム・ノグチの世界観を表現したテーブルと言えるでしょう。

さらに前述したように無垢アッシュ材を使用することにより、木目の美しさも表現しており、和の心を持つテーブルと言われ、日本の家や和室にも合うものとなっています。芸術的なデザインをしているのにも関わらず、どんなインテリアにも違和感なく馴染んでしまう不思議な魅力をもつテーブルです。


サイクロンテーブル


らせん状に絡み合う脚が印象的な「サイクロンテーブル」。まるで台風の風が巻いたような流れと動きを感じさせるこのテーブルは、細いワイヤーの脚をしっかりと支えている重厚な台座までも美しさを損なわないデザインとなっています。

台座から絡み合うワイヤーの脚、そして美しい木の天板は、まさしく一つのオブジェとして完成されているテーブルと言えるでしょう。また、「サイクロンテーブル」はどんなデザイン性の高い椅子と組み合わせても違和感を感じさせないのが特徴です。さらに様々な色、デザインタイプの椅子とも合わせやすく、馴染んでしまうのが魅力といえます。


フリーフォームソファ


角がない美しい曲線美をもつ「フリーフォームソファー」は、直線が一切なく、非対称で言葉で表現しきれない美しさを持っています。また、曲線で出来ているため、自由にどこに座っても良いのです。

横から見るとまるで、小さな船のようにも見え、滑らかなラインは心地よい座り心地を演出してくれます。

芸術的で圧倒的な存在を放つ「フリーフォームソファー」ですが、柔らかで自然なフォルムがどんな部屋の空間にも合うので、自由にインテリアを楽しむことができます。




まとめ


「20世紀が生んだ偉大な彫刻家」として、今もなお世界中の人を魅了し続けるイサム・ノグチ。彫刻をはじめとして、インテリアデザインや造園建築、舞台美術など多彩な才能を持っているのも魅力的ですね。

斬新なデザインの中に自然と調和する柔らかな美しい曲線は、辛い幼少期、自分自身の内面と向き合ったからこそ表現することができたのではないかと感じます。また、イサム・ノグチの作品や家具に共通しているものが、圧倒的な存在感があるにも関わらず、その場所に溶け込み、今もなお多くの人に愛され、心地よい空間を演出し続けていることではないでしょうか。

私達の周りにあふれる自然のものは非対称の物がたくさんあり、それらは自然な美しい曲線を描いています。その自然な造形の美しさをアートにしたのが「イサム・ノグチ」のデザインであり、それゆえ、どんな空間にも馴染む魅力を備えているのではないかと言えます。

彫刻作品は家に置いておくことは出来ませんが、家具であればその美しい曲線を自分のものとして堪能することができます。一度イサム・ノグチのアートな家具を間近で感じてみてはいかがでしょうか?

 

参考サイト
・20世紀を代表する彫刻家!イサム・ノグチ|現代アートの歩き方
(https://www.contemporaryart-walk.com/artist/isamu-noguchi.html)
・偉大なる彫刻家 ノグチ・イサムの生涯 -その1/9 - ディスカバー・ニッケイ
(http://www.discovernikkei.org/ja/journal/2011/4/5/isamu-noguchi/)
・天才彫刻家イサム・ノグチとその作品|P.Art.Online
(https://p-art-online.com/column/6392/)
・イサムノグチの写真、名言、年表、子孫を徹底紹介 | 昭和ガイド
(https://showa-g.org/men/view/338)
・平和を願う広島の街に溶け込んだ、巨匠イサム・ノグチの斬新な欄干 - TRiP EDiTOR
(https://tripeditor.com/169149)
・イサム・ノグチ庭園美術館/The Isamu Noguchi Garden Museum Japan
(http://www.isamunoguchi.or.jp/)
・Isam Noguchi イサム・ノグチ作品群|こどもの国(神奈川県横浜市)
(https://www.kodomonokuni.org/sansaku/isamunoguchi.html)
・イサム・ノグチ - デザイナーズ家具専門通販店|N PLUSエヌプラス
(https://www.nsb-relaxingroom.com/?mode=cate&cbid=470072&csid=9)
・イサム・ノグチのソファとテーブルの世界 | ユアデザイナーズ
(https://www.your-designers.com/isamunoguchi.html) 

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