建築作品や家具デザインなど、あらゆる側面から人々の価値観を大きく変えた「ル・コルビジェ」
建築界に大きな影響を与えた「ル・コルビジェ」
建築家として非常に名高い「ル・コルビジェ」。その名前を一度は耳にしたことがある、という方も多いのではないでしょうか。
しかしながら、コルビュジエとはどんな人物で、何がそんなにすごいのかを詳しく知っている方はあまりいないのかもしれません。
ル・コルビジェはドイツのミース・ファン・デル・ローエとアメリカのフランク・ロイド・ライトと並ぶ近代建築三大巨匠の一人で、建築業界に革新的な影響を与えた「近代建築の五原則」を提唱し、この原則が、モダニズム建築の基礎となっています。
実は、コルビジェは建築だけでなく、家具のデザイン、街全体の都市計画にも関わるなど、非常に多彩な才能をもち、そして芸術家のような側面も持っていました。
建築史に残る偉大な建築家「ル・コルビジェ」。
今回は、その半生や日本との関わり、建築以外での才能の豊かさにスポット当てながら、「ル・コルビジェ」を巡ってみたいと思います。
ル・コルビジェとは
建築家として様々な功績を残した「ル・コルビジェ」ですが、建築家になるまでの道のりや建築家になってからはどのような人生を送ったのでしょうか。
そして、コルビジェは「日本」とも大変関係が深く、日本人の弟子を3人受け入れており、日本の建築にも大きな影響を与えました。
さらに、国立西洋美術館本館は、建築家のル・コルビュジエが設計した日本で唯一の建造物で、世界遺産にも登録されています。
ル・コルビジェの半生
ル・コルビュジェ(本名:シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ=グリ)は、1887年にスイスで時計職人の父エドゥアールとピアノ教師の母マリーの次男として生まれました。
時計職人として家業を継ぐために美術学校へ行きますが、当時時計産業は斜陽化しつつあり、さらにコルビジェは視力が弱く、それが時計職人としては重大なハンデとなるため、断念することとなります。
美術学校在学中の1907年、コルビュジエの才能を見いだした美術学校の校長シャルル・レプラトニエの勧めで、建築家ルネ・シャパラと共に「ファレ邸」の設計を手がけました。
1908年にはパリへ。鉄筋コンクリート建築の先駆者であるオーギュスト・ペレの事務所に、1910年にはペーター・ベーレンスの事務所に籍を置き、短期間ではありましたが、実地で建築を学ぶことができました。
1911年から半年かけてベルリンから東欧、トルコ、ギリシャ、イタリアを巡る東方への旅へ出発。
その後、美術学校で教師したりアトリエを転々としつつ、この時期からル・コルビュジエは本格的に建築家になることを決意したようです。
1914年には、鉄筋コンクリート構造を使用した「ドミノシステム」という新しい架構形式を発表しました。
1917年には、パリへ向かい、彼の従兄弟でもある建築家ピエール・ジャンヌレと共同で建設事務所を設立し建築家としての活動を開始。
1918年に建築・カルチャー雑誌『エスプリ・ヌーヴォー』を創刊し、誌面で新たな建築や美術について論考するようになり、徐々に存在を知られるようになりました。
また、この頃から本名ではなく、「ル・コルビュジエ」というペンネームを使用し始めます。
1926年には近代建築の5原則を発表。この5原則を使い「サヴォア邸」などの設計に着手。
1930年には「現代建築国際会議(CIAM)」を開催。世界の建築をリードし、様々な都市計画案を提案しました。この時期の建築作品として、「イムーブル・クラルテ」「ナンジェセール・エ・コリのアパート」のような鉄やガラスを多用した集合住宅をつくる一方、「マンドロー夫人邸」「レ・マトゥの家(六分儀の家)」のように木や石を用いた小住宅など、幅広く活躍します。
第二次世界大戦後には独自の尺度「モデュロール」を発表し、この尺度を用いた集合住宅《ユニテ・ダビタシオン》や、《ロンシャンの礼拝堂》《ラ・トゥーレットの修道院》などの宗教建築、インド・チャンディガールでの都市計画と大型公共建築などを手掛けました。
1955年には国立西洋美術館建設のため来日。同時期に代表作であるロンシャンの礼拝堂の設計をスタートさせます。
晩年はフランスで過ごし、1965年に南フランスの海で心臓発作を起こし、77歳で他界しました。
「ドミノシステム」と「近代建築の5原則」「モデュロール」とは
いち早く鉄筋コンクリート造の可能性に鋭く着目していたコルビジェ。
しかしながら、鉄筋コンクリートは重苦しく、設計上の制約が多く、窓は小さくて室内が暗いという組積造建築の弱点がありました。そこでコルビジェは、鉄筋コンクリート製の柱と床板で建物の荷重を支え、階段で上下階をつなぐという単純な構造で建物を作る「ドミノシステム」という建築工法の基礎を発表。この方法により、石やレンガを積み重ねて壁を建てることで建物を支える旧来の建築とは違い、柱で床を支えることで壁や仕切りは自由に設置することが可能になりました。
さらに、ドミノシステムは「安価で量産可能な住宅を作りたい」というコルビュジエの願いともマッチし、「住宅は住むための機械である」という彼の名言の根幹となる建築工法とも言えます。
このドミノシステムを通し、コルビジェは続々と新たな建築のセオリーを生み出しました。
それが、
- ピロティ(1階部分の壁をなくし、吹き放ちにすること)
- 自由な平面
- 自由な立面(ファサード)
- 水平横長の窓
- 屋上庭園
の5つです。
現代では「近代建築の五原則」として多くの人に知られています。
また、コルビジェは人間の身体と黄金比に沿った建築を目指し、世界共通で使える「モデュロール」という建築の基準寸法システムを考案。
この寸法システムは、建築だけではなく家具から都市に至るまであらゆるものに対応しているので、建物全体を美的にも機能的にも調和することができるようになりました。
ル・コルビジェと日本人の弟子たち
コルビジェは、1955年に国立西洋美術館建設のため来日し、日本人の弟子たちと共に設計に当たりました。「国立西洋美術館」は、日本で唯一のコルビジェの作品であり、コルビジェが手がけた美術館3つの中のひとつです。さらに、アジアではコルビジェの作品は、インドのチャンディーガルの作品群以外「国立西洋美術館」だけなので、大変貴重な建築物とも言えるでしょう。
そんな貴重な建築物の設計に携わった、コルビジェの弟子であり、有名建築家である前川國男・坂倉準三・吉阪隆正の3人についてご紹介します。
前川國男
ル・コルビュジエに最初に弟子入りした人物が前川國男です。
彼は日本の初期のモダニズム建築をリードした建築家で、ル・コルビュジエの他にも、アントニオ・レーモンドのもとで建築を学びました。
前川國男が手がけた建築物として代表的なのは、東京文化会館(1961)や東京都美術館(1975)国立西洋美術館新館(1979)など。日本建築とモダニズムが調和されたデザイン設計が特徴と言われています。
坂倉準三
坂倉準三は岐阜県出身です。建築家美術史を専攻後、兵役。その後、パリへ向かいました。
パリ工業大学で建築の基礎を学んだ後、前川國男の紹介でル・コルビュジエの事務所に入り建築を学びます。さらに、パリで建築を学んでいる時期に岡本太郎と知り合い、帰国後にアトリエの設計を依頼されています。また、パリ万博日本館(1937)や岡本太郎記念館(1953)などを手がけました。
彼の作品として、ル・コルビュジエの「無限成長美術館」の考えを受け継ぎ設計した「神奈川県立近代美術館旧鎌倉館」が有名です。
吉阪隆正
吉阪隆正は、日本人として最後の弟子となります。前述の前川國男と同様にアントニオ・レーモンドの事務所にも所属し、建築を学んでいました。
コルビジェの弟子としては、マルセイユにあるユニテ・ダビタシオン(1945〜1952)を担当しています。
大学セミナー・ハウス本館(1965~1971)やベネチア・ビエンナーレ日本館 (1955)が吉阪隆正の代表建築として有名です。
世界遺産に登録された「ル・コルビュジエの建築作品」
ル・コルビジェの作品は、東京・上野の「国立西洋美術館」を含む、7カ国・17の建築が世界文化遺産登録されています。代表的な作品をご紹介します。
サヴォア邸
1931年、パリ郊外に竣工。コルビュジエの提唱する近代建築の五原則すべてが反映されている建物として有名で、「20世紀の最高傑作」といわれています。
ユニテ・ダビタシオン
「ユニテ・ダビタシオン」とはコルビュジエが設計した集合住宅の総称を指し、フランス語で「フランス語で「住居の統一体」と「住居の単位」という二つの意味を持っています。ユニテ・ダビタシオンはマルセイユ以外にもありますが、最も有名なのはマルセイユのユニテ・ダビタシオンです。8階建て337戸の最大1600人が暮らせる大規模住宅であるにも関わらず、ピロティで地面から持ち上げられたような構造になっているところが印象的です。
なお、マルセイユの他にもナント・ルゼ、ベルリン、ブリエ、フィルミニの合計5か所で建設されました。
ラ・トゥーレット修道院
1960年に建てられたラ・トゥーレット修道院は、フランスのリオン近郊にあります。
ダイナミックなモダニズムを感じさせる建築として、ル・コルビュジエ後期の代表作と言われています。
丘の斜面に柱を立てピロティを作り出し、建物は、直線的で荒々しく、打ちっ放しのコンクリートが重厚感を引き立てています。
ル・コルビジェと家具
ル・コルビュジエは、建築だけでなく絵画や家具のデザインにも幅広く取り組んでいました。
1910年代の末期、コルビジェは同じフランスで活躍していた画家のオザンファンと共に「ピュリズム」を提唱。「ピュリズム」とは、作り手の主観や感情によって付けられた装飾を一切排除し、作品そのものの意味だけを純粋に追求しようという考え方です。その後、コルビジェは画家から建築家へ転身しますが、建築家となった後も、コルビジェ自身に「ピュリズム」の考え方は残り続け、彼の建築や家具デザインに活かされています。
1928年にデザインしたLCシリーズは、彼の家具デザインの代表作とも言われ、現在でも多くの人々を魅了し続けています。発売当時からイタリアのカッシーナ社が製造しており、現在でも購入することが可能です。
多くのファンを持つ「LCシリーズ」の特徴と魅力をご紹介します。
家具デザインとの出会い
ル・コルビュジエの家具デザインはスイス時代にまでさかのぼります。
建築家として初めて設計した「ファレ邸」、両親と自分のための住まい「ジャンヌレ・ペレ邸(現メゾン・ブランシュ)」などで、戸棚や椅子をデザインしました。それらは、木製の素朴な雰囲気をもった物で、後に彼が制作に携わった家具とは大いに異なっているのが印象的です。
1927年に、インテリアデザイナーとして精力的に活動していたシャルロット・ペリアンがコルビジェのアトリエに入所しました。ペリアンを中心に、ル・コルビュジエと再従弟ピエール・ジャンヌレが共同開発によって作り出した家具が「LCシリーズ」と呼ばれています。「LC」とはル・コルビジェのイニシャルから取って名付けられたようです。
以下に「LCシリーズ」の代表作をご紹介します。
シェーズロング
「世界最高デザインの休憩椅子」と言われるシェーズロングですが、その一番の特徴は、人体の曲線を活かしたカーブによって、椅子を起こしても倒してもくつろげる、究極の曲線美。
イタリア製のしなやかで美しい本革を使用し、椅子全体が弧を描く様に動き、使う人によって最適な形になります。外見の美しさはもちろんのこと、ゆりかごの様に人がリラックス出来るように計算されていることから「世界最高デザインの休憩椅子」と呼ばれるようになったのではないでしょうか。
スリングチェア
スリングチェアはデザイン・機能ともに優れた椅子として「LCシリーズ」の中でも高い人気を誇っています。一本のステンレスで背もたれの軸を支えているので、座る姿勢によって背もたれが自在に動く構造になっています。そのため、使う人それぞれが座り心地のよさを感じることが出来るようになっています。
グランコンフォール
グランコンフォールは、キューブ状の見た目と分厚いクッションを包み込むように支える金属が印象的な家具です。
「家具の歴史に大きな影響を与えた」として高い評価を受け、他のLCシリーズと共に、1928年当時に作られた物がニューヨーク近代美術館に収蔵されています。
分厚い5つのクッションが身体全体をしっかり包み込んでくれるので、安定感や安心感を感じることができます。
それぞれのクッションは取り外せるようになっていますので、お手入れも楽に行う事が出来るのも、機能性や実用性を重視したコルビジェらしい配慮と言えます。
まとめ
コルビジェが今なお多くの人々を魅了し続ける理由として、建築家として様々な技法を発表し続け、明るく清潔で機能的な住空間を創造し続けたこと、また、機能性と洗練されたデザインの家具を量産化して多くの人に行き渡るように努力し続けたことにあるのではないでしょうか。
美しいフォルムでありながら機能性も高いル・コルビジェの家具。
お家のインテリアに是非取り入れてみてはいかがでしょうか?
参考サイト
・ル・コルビュジエの凄さがわかる「近代建築の五原則」
(https://www.renovation-soup.com/architecture/190913/)
・近代建築の巨匠 ル・コルビュジエの5原則をこの目で! フランス旅行専門店「空の旅」
(https://www.air-travel-corp.co.jp/corbusier/index.html)
・ル・コルビジェのデザイナーズ家具が、今なお愛される理由。 | デザイン家具ドットコム
(https://designkagu.com/blog/colbisie03-theme/)
・ルコルビュジエの建築作品 | 世界遺産オンラインガイド
(https://worldheritagesite.xyz/le-corbusier/)
・ル・コルビュジエとは?代表作や建築界での業績を詳しく解説! | thisismedia
(https://media.thisisgallery.com/20236600)
・家具 | Galerie Taisei | 大成建設
(https://www.galerie-taisei.jp/archives/furniture_index.html)
・日本で唯一のル・コルビュジエによる建築作品「国立西洋美術館」世界遺産へ。 - #casa
(https://hash-casa.com/2016/07/30/le-corbusier-japan/)
・ル・コルビュジエ - Wikipedia
(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%B3%E3%83%AB%E3%83%93%E3%83%A5%E3%82%B8%E3%82%A8)
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