今さら聞けないジオ・ポンティ。世界で一番軽量な椅子を手掛けたイタリアモダンの父

今さら聞けないジオ・ポンティ。世界で一番軽量な椅子を手掛けたイタリアモダンの父

世界で最も軽いと言われる椅子の存在をご存知ですか?それはジオ・ポンティがデザインしたスーパーレジェーラで、彼が手掛けた家具や建築物などのデザインもまさにイタリアモダンなスタイルのものばかりです。


ジオ・ポンティがデザイナーとして活躍した時代は、「大胆な発想のデザイン」や「鮮やかな色使い」、そして「スタイリッシュなフォルム」が特徴のイタリアモダンスタイルが盛んな時期でした。


そんな戦後〜25年ぐらいまでにイタリアでデザインされた、イタリアモダンを代表するジオ・ポンティの作品の魅力を紐解いていきましょう。

 

ジオ・ポンティ。スーパーレジェーラやミラノの超高層ビルの生みの親

ジオ・ポンティのジオは通称で、本名はジョヴァンニです。

 

ミラノ工科大学建築学部を卒業後、建築分野だけでなく家具のデザイナーや建築雑誌『ドムス』の初代編集長、さらには大学教授としても活躍を果たしました。

 

彼の作品の代表的なものはスーパーレジェーラという超軽量の椅子やミラノの超高層ビルのピレリ・ビルなどがあります。また、美術館や豪華客船など様々なジャンルのデザインを手掛けましたが、ジオの住宅建築も有名です。

 

ジョヴァンニ・ランダッチョ通りの集合住宅、プリン通りのカサ・ラポルテ、デッサン通りの住宅が彼の手掛けた三大住宅建築として知られています。

 

まさにイタリア出身の世界に誇る建築家兼プロダクトデザイナーです。

 

ジオ・ポンティの生涯。戦争経験からアートディレクター、大学教授まで

1891年のイタリアのミラノで、ジオ・ポンティは誕生しました。

 

彼は30歳の時にミラノ工科大学建築学部を卒業しますが、第一次世界大戦中は前線で戦って勲章を受けたのです。

 

その後すぐに彼はエミリオ・ランチャとミノ・フィオッキと一緒に建築事務所を設立しました。

 

そしてジュリア・ヴィメルカーティとめでたく結婚し、彼女との間に4人の子宝にも恵まれたのです。大学卒業後も彼は、仕事もプライベートも充実した日々を過ごしていました。



事務所の設立から2年の月日が経った1923年、陶磁器メーカーのリチャード・ジノリ社でアートディレクターに抜擢されました。

 

リチャード・ジノリ社は1956年にイタリアで最も大きい陶磁器メーカーになるため、ジオ・ポンティがアートディレクターとして活躍した7年間の間にもどんどん成長していったのです。そんな中、彼によってデザインされたジオ・ポンティは、今でも熱烈なファンがいます。

 

アートディレクターとして忙しい日々を過ごしていたジオ・ポンティは、それだけでは満足せずデザイナーとしても勢いを増していきました。

 

1925年には彼の代表作ともいえるジョヴァンニ・ランダッチョ通りの集合住宅を手掛け、1926年にカサ・ラポルテを設計したのです。

 

さらに1928年には彼はジャンニ・マッツォッキと共に雑誌『ドムス』を創刊し、ジオ・ポンティは初代編集長を務めました。この雑誌は国内外のデザイン界隈や建築界隈に大きな影響を与える雑誌に成長していきます。

 

雑誌がきっかけでジオ・ポンティはフランコ・アルビニとも面識を持つことができたのです。

 

1933年にはFontana Artのアートディレクターに就任し、リチャード・ジノリに続く成功を収めます。1961年には70歳で彼の母校であるミラノ工科大学建築学部の教授として教鞭をとりました。

 

その後、87歳で彼は無念にもこの世を去ってしまったのです。

 

ジオの建築思想。遊びと厳格さが入り混じった芸術

ジオ・ポンティはプロダクトデザイナーとしても建築家としても活躍しました。彼の著書『建築を愛しなさい』には次のような言葉があります。

 

“建築をつくりましょう! 建築をもってする以外にはできないものをつくりましょう! 建築は、外は厳格で緊密なもの、内は遊びと驚きに満ちた有機体です。外側は結晶ですが、内側には人生があります!”

 

彼の作る建築は、まさにこの言葉を具現化したようなデザインです。

 

彼が設計したホテルに、パルコ・デイ・プリンチピがあります。このホテルは上品で都会的な建物ですが、ユニークなプールがあり心ゆくまで楽しめるのです。このホテルの詳しい魅力については後程じっくり解説しましょう。

 

わずか1700gの最軽量の椅子スーパーレジェーラは世界中にファンを持つ

みなさまは世界でもっとも軽い椅子をご存じでしょうか。

 

ジオ・ポンティは1951年に世界で一番軽い椅子をデザインしました。何度も試作を作り、試行錯誤の末1957年にやっとの思いで完成しカッシーナ社より発売されたのです。

 

発売当初は従来の椅子の概念を打ち破るかのような衝撃的な軽さで、世間をざわつかせました。

 

その椅子の名前はスーパーレジェーラで、「超軽量」を意味します。小さな子供でも指1本で持ち上げることができるくらい軽いのが大きな魅力です。重さは1700グラムで、生まれたばかりの赤ちゃんの平均的な体重の半分ちょっとしかありません。

 

重さを左右するのは素材ですが、スーパーレジェーラは何が使用されているのでしょうか。

 

実はトネリコという粘りがあり曲げに強い耐久性のある木材を使用しています。この素材は、戦前には飛行機のプロペラとしても使用されていました。

 

シート部分の素材はラタンですが、今となっては貴重な技術である手編みで作られています。スーパーレジェーラのラタンの編み込みは、緻密すぎて機械生産ができません。

 

椅子のフレームを組み立て終わったら工場からラタン編み職人の工房へと送ります。そして編み込んだラタンをフレームに編み終わったら今度は工房から工場へと運びます。こういった手間のかかる工程を経て、多くの人の手が加えられてやっと椅子が完成するのです。

 

そのためこの椅子はカッシーナ社にとって自慢の商品といえます。発売から半世紀が経過した今でも、世界中でたくさんのファンに愛用されているのです。

 

ジオ・ポンティの代表作2つ

ジオ・ポンティは教師としての一面や、雑誌の編集長としての一面もあります。しかし彼はデザイナーとして家具やあらゆる建築物などを作り上げました。

 

彼の名作はスーパーレジェーラだけでなく、あらゆる作品が評価されています。ここからはそんな彼の代表作品をご紹介しましょう。

 

ビリアテーブルランプ

ビリアテーブルランプは円錐形の台座の上に球体が置かれている構造です。それはまるで幾何学的で独創的なオブジェにも見えます。

 

芸術的にも優れているだけではありません。球体からは柔らかい光が空間を包み込むように照らすのです。夜に寝る前のほっと一息つきたい時間や日記を書きたいとき、読書をしてゆっくり過ごしたいときに最適な空間を作り出します。

 

ベッドサイドテーブルに置けば寝る前にリラックスでき、リビングに置けばプロジェクターで映画を見る際にちょうど良い照明としての機能を果たすでしょう。

ビリアテーブルランプよりもひと回り小さいミニテーブルランプもあるため、用途や置く場所によって分けて使うのも良いです。

 

1932年にジオ・ポンティがデザインしてからたちまち人気に火がのぼり、MoMAコレクションに収蔵されています。

 

ホテル・パルコ・デイ・プリンチピ

南イタリア・カンパーニア州にはいくつかリゾート地があります。ソレントもそのひとつで、ナポリ湾やヴェスヴィオ山などの壮大な自然を満喫できます。それだけでなく情緒ある旧市街の街並みを観光できるのも人気の理由のひとつで、今も多くの観光客でにぎわっています。

 

そんな場所に1962年、ジオ・ポンティが設計したホテル、パルコ・デイ・プリンチピがオープンしました。

 

このホテルはジオ・ポンティが設計しただけではありません。客室や共同スペースの家具、壁の装飾や床のタイルに渡るまでのデザインを彼が担いました。

 

ホテル内は地中海を意識したような青と白を基調にした配色で統一されています。そのため洗練されていながらも、開放的な居心地を満喫できます。先駆的で斬新なデザインなのでまるで現代でいうデザインホテルのようです。

 

さらに驚きなのは付属のプールです。こちらもジオ・ポンティがデザインしました。ひとつのプールと思いきや中に複数のプールが入っていて、飛び込み台は遊び心をくすぐられるようなデザインです。

 

ジオ・ポンティのユーモアセンスにあふれたプールで遊べば、心に残る思い出が作れることでしょう。

 

ミラノ市街の高層ビル。20世紀屈指の名建築

ミラノの市街に大きくそびえたつ、ミラノの象徴ともいえる高層ビルがあります。高さはなんと約130mのスタイリッシュなビルです。このビルはジオ・ポンティがデザインしたピレリ・ビルです。ピレリ・ビルは20世紀屈指の名建築として名をはせています。

 

第二次世界大戦後にこのビルは建てられました。

 

当初は大手タイヤメーカーのピレリのオフィスが入っていましたが、1978年に売却されてからは行政機関の施設が入っています。

 

今もなおミラノの街を彩る建物として現存しています。

 

今回はイタリアを代表するデザイナーの巨匠、ジオ・ポンティや彼の作品の魅力について迫っていきました。

 

彼は子供でも指1本で持ててしまうほど超軽量の椅子のスーパーレジェーラや、型破りなデザインのビリアテーブルランプなどの家具を発表しました。

 

そして街の象徴とも呼ばれる建築物や美術館、大聖堂や住宅、そしてホテルなど街に溢れるありとあらゆる建築物の設計士としても活躍しました。

 

時には建築雑誌の編集長として、また違う時には大学の教授としても広い分野で大活躍。

 

まとめ

イタリアにはありとあらゆるところにジオ・ポンティが遺した建築作品がたくさんあります。イタリアに出向く機会があったら、彼の建築を生で見るのも良いでしょう。感じるものが何かあるかもしれませんね。

 

【参考URL】

・ピレリ・ビル

http://uratti.web.fc2.com/architecture/gioponti/pirellitower.html

 

・世界の建築は今 No.54

https://kenchiku.co.jp/world_archive/054/index.html



・デザイン好き必見! 南伊ソレントの名建築ホテル

https://allabout.co.jp/gm/gc/456622/



・ジオ・ポンティ Wikipedia

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%82%AA%E3%83%BB%E3%83%9D%E3%83%B3%E3%83%86%E3%82%A3



・いろいろなデザイナーVol.22 ~ジオ・ポンティ~

https://www.hapsent.com/blog/basic-knowledge-of-interior-about-designer/gio-ponti-vol22/



・モダニズムの時代に独自の温かみのあるデザインをしたイタリアの建築家「ジオ・ポンティ」

https://note.com/shijimiota/n/n51f85321be23#c97766dc-9e57-40e9-b0ae-26d9f55c20cf



・ジオ・ポンティとヴィコ・マジストレッティとは?椅子と照明の代表作を画像で確認

https://interior-no-nantalca.com/gio-ponti-and-vico-magistretti/



・Gio Ponti

https://www.molteni.it/jp/designer/gio-ponti



・(6) 出生時の体重別にみた出生

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/syussyo-4/syussyo3-6.html



・木材図鑑

https://wp1.fuchu.jp/~kagu/mokuzai/122.htm



・ビリア ミニ テーブルランプ(LED電球)

https://metrocs.jp/item/4905/



・Bilia ミニ テーブルランプ ホワイト

https://www.momastore.jp/shop/g/g0497608301149/