今さら聞けないフィリップ・スタルク。見るものを笑顔にする稀代の建築家

今さら聞けないフィリップ・スタルク。見るものを笑顔にする稀代の建築家

東京スカイツリーを大きく見渡せる街のひとつが浅草です。そんな浅草の街を彩る建物はたくさんあります。


浅草寺に雷門、アサヒビールの本社などなど。この中でフィリップ・スタルクが手掛けた建物は、アサヒビール本社の象徴ともいえるフラムドールと呼ばれる金色のオブジェです。


外国人観光客で年中賑わいをみせる浅草は、日本の顔でもあり、フィリップ・スタルクはそんな街のシンボルを作り上げました。


今回はフィリップ・スタルクの魅力について探っていきましょう。

 

フィリップ・スタルク。あらゆるジャンルのデザインを手掛ける建築家

フィリップ・スタルクはフランス・パリ出身の建築家・デザイナーです。

 

デザイナーとしては椅子や照明、ランプ、食器などのインテリアデザインからエコロジーな電動自転車にファッション、日用品などありとあらゆるジャンルのデザインまで手掛けています。

 

建築家としてはオフィスビルやレストランにホテル、そしてなんと大統領私有のアパートの設計まで担いました。特にホテルに関しては数多く携わっています。

 

ニューヨークにある高級ホテルのハドソンホテルもそのひとつで、このホテルはドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』でも使われました。

 

このホテルはもともと学生寮でしたが、リノベーションしてホテルとして生まれ変わったのです。

 

ホテルの内装や共有スペース、すべてにフィリップ・スタルクのこだわりがつまっています。

 

ロビーの壁一面はつる草で覆われていて、ヴィンテージ風のシャンデリアが厳かながらも上品な雰囲気を醸し出しています。

 

宿泊客はその高級感漂う非日常的な空間を満喫できるのです。

 

注目を浴びるたび人気は上昇!世界が注目するデザイナー

1949年、フランス・パリでフィリップ・スタルクは産声をあげました。

 

彼の父は航空エンジニアとして、航空機に使用される設備を開発・設計する仕事をしていました。

 

フィリップ・スタルクは父の仕事に影響を受け、何かを生み出す仕事に憧れをもっていたのです。

 

彼は18歳でカモンド美術学校を卒業し、デザイン事務所を設立。その後、当時一世を風靡していたピエール・カルダンのブランド会社のアートディレクターに就任しました。そこで商品やインテリアデザインを担当してたくさんの学びを吸収し、4年目に退職したのです。

 

1977年には彼自身の会社UBIK社を設立しました。UBIKとはフィリップ・K・ディックの小説のタイトルです。その2年後には彼はアメリカでスタルク・プロダクト社も立ち上げました。

 

彼は調子よく、活躍の幅を広げていきました。そんな彼の活躍ぶりは文化大臣のジャック・ラングの目についたのです。

 

1983年、フランスの文化大臣であったジャック・ラングの推薦で、大統領ミッテランの私有アパートを改修するためにフィリップ・スタルクが選ばれました。

 

このことがきっかけで、たちまちフィリップ・スタルクの名は世に広まり、世界中の国々でホテルの設計に携わるようになったのです。彼は日本でも建築家としての頭角をあらわしました。

 

金の炎で有名なアサヒビール本社の設計だけではありません。

 

大阪にあるバロン・ベールというテナントビルをデザインしました。このビルは8階建ての窓ひとつないビルなのです。なんといってもビル全体が緑一色でデザインされているため、ひときわ目立っています。

 

彼はプロダクトデザイナーとしても日本と関わりがあり、セブンイレブンで販売される文房具のデザインも担いました。また、富士フィルムと提携した時はデジタルカメラの試作品をデザインしたのです。

 

フィリップ・スタルクはフランスが誇る、世界で注目を集めるデザイナーとして今もあらゆる商品をデザインしています。

 

ユーモアを感じさせる作品作り。触れる人を笑顔に

フィリップ・スタルクはアサヒビール本社のシンボル金の炎からもみてとれるように、見る人を驚かせ思わず笑顔にさせるような作品づくりをします。

 

この後詳しくご紹介しますが、マスターズチェアも良い例です。

 

この椅子は三大名作椅子のフォルムを3つ合わせた形の椅子です。まさか三大名作椅子をひとつに集約してしまおうと考えるのは、サービス精神旺盛でユーモアあふれるフィリップ・スタルクだからできたことです。

 

また東京都港区にあるユーネックスナニナニというオフィスビルも彼の個性が顕著に表れた作品といえます。

 

このビルの名前からも不思議な雰囲気が醸し出されているように、ビル自体も摩訶不思議な建物です。外壁全面が青緑色で、まるで地面から怪物が浮かび上がってきたかのような形状をしています。ビルの名前も日本語の「何」が由来で、まるで巨大な芸術作品のようなインパクトのあるオフィスビルです。

 

フィリップ・スタルクの作品はどれも強烈な印象を残すものばかりで、いつも私たちを驚かせます。

 

アイデアは日常に。レモン絞り器はイカ料理からのヒント

1990年代に当時の人々に衝撃を与えて感動させた商品があります。それがジューシーサリフという実にスタイリッシュなレモン絞り器です。

 

今でも世界で一番有名なレモン絞り器として世界中で愛用されています。

 

近年で最も世間に激震を走らせた発明といっても過言ではないレモン絞り器ですが、実はひょんなことから誕生しました。

 

フィリップ・スタルクは地中海の海辺で休暇を楽しんでいました。彼がイカ料理を味わっていた時にレモンを絞ることになったのです。その時イカの形からインスピレーションを受けてジューシーサリフのイメージが湧いたそうです。

 

使用方法はとっても簡単で、まずグラスの上にスクイーザーを置きます。イカの頭にあたる部分に半切りにしたレモンを当てて絞ります。これでジューシーなレモン汁が絞り出されてくるのです。

 

アレッシィ社から発売されてから跳ぶように売れるヒット作となりました。

 

フィリップ・スタルクの名もこの時から世界中に広く知れ渡るようになったのです。

 

フィリップ・スタルクの代表作2つ。ポリカーボネート活用の魅惑なアイテム

フィリップ・スタルクは建築物から電化製品、衣服に家具やインテリア用品など、さまざまな製品をデザインしています。中でも彼がデザインした代表的な家具をご紹介していきましょう。

 

ゴーストチェア

ゴーストチェアは椅子全体が透明のポリカーボネード樹脂で成形されているため、まるで幽霊のような存在感です。

 

この椅子はフランスでルイ15世が即位していた時代に広まった様式のロココ調を意識して制作されています。単にロココ調の椅子ではなく、フィリップ・スタルクのアレンジを加えてデザインされ、2002年に発売されました。

 

優雅でクラシカルなデザインで長時間ゆったり過ごしていても問題ないように、耐久性にも優れています。

 

古風でゴージャスな雰囲気もありつつモダンで近現代的なので、私たちの生活にも取り入れやすい椅子です。

 

屋内でも庭やベランダでも場所を選ばず使えます。軽量なので持ち運びもしやすく、日常使いしやすいのも魅力のひとつです。

 

エロエスチェア

エロエスチェアはエーロ・サーリネンの名前に由来しています。この椅子はエーロ・サーリネンのウームチェアを意識したかのようなデザインです。

 

独創的な丸い曲線が美しく、まるで吸い込まれそうな見た目も特徴といえます。

 

ポリカーボネート製の光沢もうるわしく、光の加減によって水面の揺らぎのようにきらめきます。

 

硬すぎもなく柔らかすぎなくもない座り心地ですが、見た目以上に身体を包み込むため、座り心地は抜群です。

 

脚にもフィリップ・スタルクのこだわりが潜んでいます。それはイームズのシェルチェアを彷彿とさせるようなスチール脚を採用していることです。

 

エロエスチェアの広告は、裸の女性が脚を抱えてエロエスチェアに腰掛けている写真が採用されています。

 

そんなエロティックな意味も込められているのか、この椅子は芸術的な美しさがあります。アーティスティックで近未来的なエロエスチェアは今でも世界で愛されています。

 

禁断のインスパイア?世界三大椅子をひとつに凝縮

フィリップ・スタルクは三大名作椅子をなんとひとつに凝縮させた作品を発表したのです。

それがマスターズチェアです。

 

マスターズチェアは三大名作椅子のフォルムを重ね合わせた非常にユニークな作品で、発売当初から人々の注目を浴びました。

 

ここでいう三大名作椅子はイームズのシェルチェア、ヤコブセンのセブンチェア、サーリネンのチューリップチェアです。マスターズチェアはそれぞれのアウトラインを1つの椅子に結合させたデザインで、そのずば抜けた発想力に発売当初は家具業界に衝撃が走りました。

 

あっと驚くようなデザインですが、実は機能性も充実しているのです。

 

背もたれ部分にはくぼみがあり、安定感がありながらも包み込まれるような座り心地を堪能できます。

 

ゴーストチェアと同様に軽量のため、屋内外どちらでも手軽に持ち運べるため使いたいときに使えます。

 

天気の良いときはベランダに椅子を置いて読書をするもよし、雨の時は窓際に置いて雨音を聞きながらレコードに耳を傾けると最高のひとときを楽しめるでしょう。

 

まとめ

今回はフィリップ・スタルクの経歴や作品について詳しくみていきました。

 

彼は建築や家具に日用品、ボートなど多岐に渡る種類のデザインを手掛けたのです。そしてそのどれもが斬新なアイデアから生み出されたものばかりでした。

 

たとえデザイナーであっても固定概念に縛られずにデザインすることは難しいものです。

 

しかしフィリップ・スタルクは今まで見たことのない新しい商品を次々と発表したので、世間を圧倒させました。

 

きっと今後も彼は彼にしかデザインできない商品を作り出し、私たちを驚かせてくれることでしょう。

 

 

【参考URL】

・電動自転車も、スタルクが手がけると…。

https://casabrutus.com/categories/design/3433

 

・フィリップ・スタルクが手掛けたNYのデザインホテル

https://allabout.co.jp/gm/gc/410094/

 

・カルテル エロエスチェア フィリップ・スタルク 回転式コバルトブルー

https://usedfuruichi.com/product/kartell-eros-chair-philippestarck/?v=24d22e03afb2

 

・カルテル Kartell エロエス ERO S ダイニングチェア ブラック フィリップ・スタルク ~無駄のない美しさ~

https://tokyo-recycle.net/archives/%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%83%86%E3%83%AB-kartell-%E3%82%A8%E3%83%AD%E3%82%A8%E3%82%B9-ero-s-%E3%83%80%E3%82%A4%E3%83%8B%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%81%E3%82%A7%E3%82%A2-%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF.html

 

・JUICY SALIF レモンスクイーザー

https://www.webo-kobe.com/items/kitchen/alessi3/juicysalif.html

 

・世界で最も有名なALESSIレモン絞り器♪

https://shopblog.tomiya.co.jp/brand/tomiya/shop/omotecho-style-store/bfada4bd-c27a-469b-899f-cd528d9be1c8

 

・マスターズ

https://kartell.co.jp/item/342.html

 

・カルテル ルイゴーストチェア フィリップ・スタルク クリスタル

https://usedfuruichi.com/product/kartell-louis-ghost-chair-philippe-starck/?v=24d22e03afb2

 

・フィリップ・スタルク Wikipedia

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%97%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%AB%E3%82%AF

 

・Philippe Starck

https://www.cassina-ixc.jp/shop/r/r221012/

 

・デザイナー フィリップ・スタルクを知ろう! ダイニング・チェア ・クリスタルなど

https://sumukoto.com/designer-philippe-starck/

 

・「デザイナーをもっと知ろう!!」シリーズ フィリップ・スタルク氏

http://www.interior-joho.com/knowledge/detail.php?id=343

 

・フィリップ・スタルクが生み出す造形美。プロダクトに込められた一流デザイナーの想いとは

https://www.slash-m.jp/luxurious-gem/philippe-starck/

 

・航空エンジニアになるには

https://school.js88.com/catalog/naruniwa/guide?job-group=121&job-genre=12102&job=724

 

・ピエール・カルダン Wikipedia

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%82%A8%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%83%80%E3%83%B3

 

・【残念な珍建築】フィリップ・スタルクが手掛けた谷町九丁目の珍ビル「バロンヴェール」を見物する

https://osakadeep.info/tanimachi-baronvert-building/#gsc.tab=0

 

・3次元加工技術と「ユーネックスナニナニ」

https://www.kikukawa.com/metalwork-news-unhex-nani-nani/

家具の商品