自然から得られる光について

自然から得られる光について

以前、照明における光源の単位などをご紹介しました。照明のような人工的な光とは別に、太陽の光などによる明るさを「昼光照明」といいます。

たとえば、新宿にあるショールーム。直射日光は入りませんが、午前中の室内でも明るさが十分あります。

 

太陽からの日差し「日照」と太陽の光が空気で散らばった「天空光」。

この2つの自然の光とついて紹介します。

 

新宿ショールーム。自然光だけの室内の明るさ

太陽の動きと日照時間

四季のある日本では、季節ごとに太陽の日の出と日の入りの角度が変わります。

春秋分では、太陽は真東から昇って、真西に沈みます。夏至と冬至では、日の出と日の入りが、夏至では北に30°ほど、冬至では南に30°ほど寄ります。

夏に日中の時間が長いのは、北寄りに30°傾いていることで、太陽がより高く登るためです。


太陽の傾きが変わると、日差しの角度が変わります。

南面で計測したとき、それぞれの季節の日照時間は、春秋分は最大12時間、夏至は7時間、冬至は9時間とされています。東西で計測した場合だと、春秋分は6時間、夏至は7時間、冬至は5時間です。南向きの住宅が好まれるのはこの理由です。


暑い夏は直射日光が当たる時間が短く、少し肌寒い季節には太陽の力を借りて、暖かさを確保することができます。


空気の錯乱光、天空光

自然の光には、太陽から直接得られる日光の他に、空気によって散らばったり、透過して地上に降り注ぐ光(天空光)があります。直射日光と違い、光の方向性がないので、彩光に用いられています。

天空光の屋外水平面の明るさ度合いを「全天空照度」といい、薄曇や雲の多い晴天が50000lxと一番明るく、快晴の青空よりもおよそ5倍の明るさがあります。


室内においては、全天空照度とその照度を室内で受けた点の明るさの割合を「昼光率」といいます。

昼光率を元に照明の数や配置の計画を立てるとともに、室内の明るさを均一に保つために窓を大きくしたり、高い位置に設けたり、個数を変えたりするなどの方法があります。



私たちは、家に日差しが入ることがとてもいいことと言われていますが、実際にどのような良いことがあるのでしょうか?日当たりが良いことのメリットを4つご紹介します。

 

1)心地よさと省エネルギーの有効

太陽の熱によって、建物内が暖かくなり、湿度が低い状態が保たれるので、気持ちいい環境になります。また、冬には暖房の効果があり、省エネルギーに有効です。

 

2)衛生環境が保たれる

直射日光が当たる部分は乾燥し、病原菌の発生を防ぐので衛生的になります。


3)健康維持に役立つ

わたしたちの身体にも日光があたり、新陳代謝が良くなります。


4)照明用のエネルギーが節約

直射日光によって明るさが確保されるので、その分、照明をつける時間が短くなります。


ですが、日差しがいっぱい入ればいいということでもなく、室内の直射日光は目にとって好ましくなく、家具に当たると傷んだり、色褪せたりするので、レイアウトなどに注意が必要です。

また、自然の明るさを室内に入れようとして、窓を多くしたり、数を増やしたりすると、温まった空気が外に流れやすくなってしまいます。温度が保たれつつ、自然の光が入るようなバランスがこちらにも必要になります。


季節によって変わる空気や気温。

自然の光のから心地よい環境を作る工夫をするのもいいですね。

 

(参考文献)

インテリア産業協会(2013), インテリアコーディネーターハンドブック統合版 下 公益社団法人インテリア産業協会