照明:ちょうどいい明るさを知る単位

照明:ちょうどいい明るさを知る単位

照明を選ぶ時に見る、なじみのない単位。

光の単位は、エネルギーの発する量や面積に対しての量など、さまざまなものがあります。今回は、空間の環境を作る上で、大切な照明の単位について、まとめました。

 

明るさの役割

 

照明による快適な光環境を整えるために、3つの視点が重視されています。


  1.  防犯、防災のための最低限の明るさを保つ、安全性
  2. 見る作業のための明るさ保つ、作業性
  3. 感情や雰囲気に影響を及ぼす演出になる、精神的あかり

これら3つのバランスがとれた「照明の明るさ度合い」をそれぞれの部屋において考える必要があります。

この明るさの度合いを「照度」といい、照度の平均値を「ルクス(lx)」といいます。

照度計で計測することができますが、このルクスがどのように計算されているか、部屋によってどれくらいの数値が必要か、ご紹介します。


可視光線という電磁波

私たちは、眼にある網膜中の視細胞が電磁波を受け取り、明るさやものの色を見ることができます。受け取れる範囲の電磁波を可視光線といい、その範囲は380〜780ナノメートル(nm)で、波長によって色や明るさなどを知覚しています。

 

光の源、光源の単位

ここでは、光源について3つの単位をご紹介します。

 

 照明の単位の図解

 

可視光線である光のエネルギーが発散されて、周りの環境が明るくなったと私たちは認識します。そのエネルギーの源が「光源(こうげん)」です。光源の明るさ度合い「光度」を示す単位を「カンデラ(cd)」といいます。


ある一定の面積に対して、光源そのもののや、反射したり、透過したりした光の明るさを示すのが「輝度」です。輝度の単位は「カンデラ毎方メートル(cd / m2)」で表します。

 

光源にも、青白いものやオレンジがかった色のものがあり、この色味の色温度を測る単位を「ケルビン(K)」といいます。基準の白色 5000ケルビンは、蛍光灯の昼白色にちょうど当てはまります。

ケルビンは、数値が高くなるほど青白く、低くなるほど赤くなります。0ケルビンはセルシウス温度に換算するとおよそ-273℃になり、絶対零度に近い値になります。


ここ以上深くなると、統計力学の世界になるので、ご興味のある方は調べてみてください。


この輝度ですが、光を見た時に眩しいと感じて、目が開けられないときがありますよね。これは、輝度の高い光によって、起こる現象で「グレア」といいます。

 

強い輝度グレア

グレアによって不快になったり、モノの識別ができなくなったりするため、グレアの光の入り方によって対策をします。

 

  • 直接、眼に入ってくる眩しさ

強い輝度の光源が視線から30度以内にあり、そこから感じる眩しさ「直接グレア」には、何かを置いて遮るなどの対策が必要になります。

 

  • 反射して、眼に入ってくる眩しさ
鏡や黒板などから反射して生じる眩しさ「間接グレア」には、視線方向に反射してくる角度に照明器具などを配置しないことが必要です。

     

    光源からの発散エネルギー

    さきほどの光源からは、何本もの光の矢(光束)が放たれていて、その光束の全体量をルーメン(lm)という単位で表します。この光の量、光との距離、光が入ってくる角度によって照度「ルクス」を求めることができます。

     

    実際の計算式は、こちらです。

     

    平均照度(lx)=ランプ光束(lm)×照明器具灯数×照明率×保守率÷床面積(m2)

     

    (インテリアコーディネーターハンドブック下より) 

     

    たとえば、1平方メートルの面積に1ルーメンの光が入ってきたとき、照度を1ルクス(lx)といいます。光源から遠いほど照度は低く、入射角が90度になるほど照度が大きくなります。


    作業によって考える照度


    それでは、どれくらいの照度の値がちょうどいいのでしょうか。

    JISでは、ダイニングやリビングは最低50ルクスが推奨されていますが、そこでする作業によって求められる明るさが違い、たとえば、読書するには500ルクス、勉強するには750ルクス位と目的によって、異なる数値が推奨されています。


    また、今ではリモートワークの実施が進み、家でもパソコンを使うことが多くなったと思います。画面を覗き込むVDT作業では、画面の表示面を100〜5000ルクス、手元のキーボードの照度を500〜1500ルクスにするのが、適当とされています。


    ちなみに、100ルクスの照度は、蛍光ランプだと、一畳あたり10ワット(W)が目安になります。そのことも知っておくと、照明を選びやすくなりますね。


    照明を選ぶ時の注意

     

    また、照明を選ぶときに、どのような部屋の雰囲気にしたいか、その雰囲気にあった照明器具はどんなものか、その器具の数など、使いたい器具や数によって、光の量が変わってきます。それによって、雰囲気が想像していたものと違くなる可能性があるため注意が必要です。選ぶ際は、照明屋さんに詳しく聞いてみるといいかもしれません。

     

    参考文献

    インテリア産業協会(2013), インテリアコーディネーターハンドブック統合版 下 公益社団法人インテリア産業協会

    HIPS合格対策プロジェクト(2000), インテリアコーディネーター1次試験合格教本 第11版 下巻 ハウジングエージェンシー