雰囲気に影響を与える色と光の要素

雰囲気に影響を与える色と光の要素

照明、家具、壁、装飾など、空間にあるさまざまな色は、そこで過ごしている人に心理的な影響を与えます。特に照明は、光環境の快適性を左右するとして研究や論文が発表されています。その要因として、「仕事のしやすさ」「居心地」「変化」という3つの視点が、そこで過ごしたいかどうかに影響すると言われています。

 

ですが、家具を選ぶにも種類がたくさんあり、自分の理想の空間をどのように組み合せれはいいのでしょうか。

光の色・家具の色が、人の感覚にどのような影響があるのかを実験した論文がありましたので、ご紹介します。


研究内容の紹介

実施した内容は、16畳のリビングダイニングを想定した空間を縮尺1/8の模型サイズで作り、下のような条件で行いました。それぞれの空間に対して、SD法という形容詞の対語が組み合わさった質問に、その空間の印象を7段階で記していく計測方法で分析した結果です。


照明光色

・電球色(低色温度、色温度:2800K)
・昼光色(高色温度、色温度:7200K)

家具

置かれた家具6つ。ソファー、ローテーブル、棚(小)、ダイニングテーブル、椅子、食器棚。

家具の色は5種類。

・橙
・緑
・青
・ハード(金属、プラスチック、合成皮革の素材)
・ナチュラル(木材、木綿布)

壁と床面

壁と床面の色は、赤、橙、緑、青、紫の5色。



家具の色を基準に壁や照明の色を変更し、それぞれ10種類の環境で得られた結果から3つの印象の要素が抽出されました。その3つは「調和・美しさ」「柔らかさ・暖かさ」「派手さ」です。


【調和・美しさ】

インテリア家具の色と照明の光源色によって影響が大きく、同系色を使った組み合わせでは、高く評価されています。

特に、緑・青・紫など、青色が含まれている冷たい色や素材の組み合わせにおいて、昼光色の照明の方が、調和・美しさを感じるという傾向もありました。


【暖かさ】

インテリアの家具の色、素材、壁と床面の色、照明光色の全てが要因になりますが、色温度が高い電球色だとより暖かいという印象が高くなりました。


【派手さ】

家具の色が緑・青、電球色の照明を使用したときに派手さを感じる傾向がありました。


また、この3つとは別に「好ましさ」「居心地の良さ」についても評価分析をした結果が下の内容です。


【好ましさ・居心地の良さ】

ナチュラル素材の家具、橙色の家具を使った空間が、全体的に高く評価されました。その反面、昼光色の照明を使って、壁と床の色が赤、青、紫色だった場合は、居心地のよさや好ましさは他の条件よりも0.5~1ポイントほど下がっていました。


照明の色温度を高くすると「暖かさ」のある雰囲気を作りやすく、また、家具や壁も暖色などの同じような色みにすると、さらに感じられます。

 

電球色・昼光色の照明のどちらとも「居心地のよさ」を感じる空間に使われていた家具は、木材や木綿布のようなナチュラルな素材のものでした。黄や橙に近い暖色があり、さらさらとした肌触りを置くことで、よりずっといたいリビングやダイニングになるかもしれませんね。




参考文献

1)槙究 (2012). インテリアの印象に及ぼす光色と物体色の影響 日本建築学会環境系論文集 第77巻, 461-466. 

2)中村芳樹 (1994). 心理評価と光環境の記述 照明学会誌 第78巻, 13-16