北欧発デザインの椅子 アルネ・ヤコブセン

北欧発デザインの椅子 アルネ・ヤコブセン

今回はモダンでスタイリッシュなデザインが多いとされる、アルネ・ヤコブセンの椅子を素材に分けていくつか紹介します。
 
 

成型合板の椅子

ヤコブセンは、1945年に発表されたチャールズ・レイ・イームズの成型合板の椅子に触発され、世界初の背と座面を一体になった成型合板の椅子を生み出します。アントチェアに始まり、セブンチェアやグランプリチェアなどが数多く発表していくこととなります。
 

アントチェア

1952 フリッツ・ハンセン社
ビーチ+スチール
 
当時の技術では9枚の薄いベニヤを重ねたものを使って、三次元の成型合板を扱うと、力の負荷がかかる部分にクラックが入ってしまう。その部分を削って強度確認を繰り返し、最終的に蟻のような独特な美しさのあるくびれ形状が導かれた。さらに、クラックをパテで埋めて補修した部分を黒く塗っていたため、蟻のように見えるアントチェア(日本ではアリンコチェアとも呼ばれる)と名付けられる。
本来は3本脚のデザインであったが、ヤコブセンの没後4本脚が作られるようになった。スチール製の脚はスタッキングも可能で、必要最小限の素材で構成された20世紀の名作椅子として称賛を受ける。
 

セブンチェア

1955 フリッツ・ハンセン社
チェリー+スチール
 
アントチェアの発表から3年後の1955年、アントチェアよりゆとりのある座面と背のある椅子として発表された。通常7万回を限度とする強度試験に、20万回耐えられる堅牢性も持ち合わせている。累計生産台数500万脚超えを誇る、ヤコブセンの大ベストセラー。
発売当時はチーク、オーク、ローズなどの突き板張り、色彩は白か黒程度であった。現在では、脚の形、カラーリング、塗りか布張りか革張りかといったフィニッシュまで様々に展開されている。
 

タンチェア

1955 フリッツ・ハンセン社
ブラック塗装+スチール
 
ヤコブセンが設計を手掛けたムンケゴー小学校の生徒のためにデザインされた椅子。スタッキングはできないが、アントチェアやセブンチェアに比べて、さらにシンプルなフォルムにまとめたリ・デザイン。背の形状が下に似ているという所から名づけられた。
 

グランプリチェア

1957 フリッツ・ハンセン社
チーク+レザー
 
脚部分まで成型合板で作られているのが特徴。
1957年のミラノ・サローネで賞を取ったところから名前がついた。
 

3103

1955 フリッツ・ハンセン社 / 3103
チーク+スチール
 
背の形状や角度が徹底的に研究されたデザイン。T字型の背と座の間のくびれ部分に弾力があることで、長時間座っても疲れにくいように設計されている。
 
 

硬質発泡ウレタンの椅子

コペンハーゲンの地に1960年に完成した、ヤコブセンの設計であるSASロイヤルホテルのためにデザインされた椅子があります。SASロイヤルホテルの外観は、四角い箱のような直線的なデザインとなっています。その内部空間に配置する家具類は、 内外の対比を強調しつつも調和をとるために、曲線を多用した丸みのあるデザインとなっています。硬質発泡ウレタンの成型技術は当時珍しく、成型合板同様新技術を取り入れた果敢なデザインです。
 

エッグチェア

1958 フリッツ・ハンセン社
レザー+スチール
 
ロビーでの使用を想定し、1つのテーブルを囲んで他の人たちとは隔離された空間をつくりだすような椅子。ハイバックで体を包み込むようなフォルム、 寄りかかるとリクライニングする背は、ゆったりと寛ぎながら使用することができる。また、比較的小さく見える4本の脚は安定している。今でこそ高い評価を受けている椅子だが、オーソドックスな家具が主流であった当時、奇抜な形をしているエッグチェアへの意見はは賛否両論であった。
 

スワンチェア

1958 フリッツ・ハンセン社
ファブリック+スチール
 
ロビーと客室用としてデザインされた椅子。軽やかさと親しみやすさのあるデザインで、白鳥が羽を広げているようにも見えるのでスワンチェアと呼ばれている。
 

ドロップチェア

1959 フリッツ・ハンセン社

レザー+スチール

  

客室内の化粧台のためのデザイン。軽やかでシンプルなデザインに、曲線によって生み出される座り心地もよい。ホテルのバーでは、銅製の脚にブラックレザーの張地で仕上げたものが使われた。市販はされていない。

 

ポットチェア

1959 フリッツ・ハンセン社

レザー+スチール

 

ロビー横の「ウインターガーデン」に配置された椅子。スチールによる細い脚、優しい楕円形のフォルムで、愛嬌の感じられるデザイン。表面の素材は、布張りと革張りの2タイプあり、布張りであれば軽やか、革張りであれば重厚な印象に変化する。

 

 

 

ヤコブセンは新素材を扱いながら、自身が設計した空間に合わせた椅子を数多く手掛けていましたが、椅子単体としても愛されています。モダンで軽快な椅子のデザインの中に、ヤコブセンがデザインと向き合ってきた姿がうかがえ、自然にそこに引き付けられているのかもしれませんね。

 

 

参考文献
『美しい椅子―北欧4人の名匠のデザイン』えい文庫
『流れがわかる! デンマーク家具のデザイン史: なぜ北欧のデンマークから数々の名作が生まれたのか』誠文堂新光社
『ストーリーのある50の名作椅子案内』スペースシャワーネットワーク