ドイツ工作連盟とその起こり

バウハウスについて調べた、前回までの記事。
(バウハウスに関する記事:バウハウスの教育課程 バウハウスのデザイナーとその名作椅子
今回は、それから少しだけ時代を遡り、ドイツ工作連盟についてみていきます。
椅子の歴史③ の末にもドイツ工作連盟について触れています。)

 

ドイツ工作連盟とは

1907年にミュンヘンにて結成された、機械生産や工業生産の可能性に目を向け、職人や芸術家、企業家など販売業者とも協力し、工業製品や産業製品の良質化を目指す団体。近代デザイン(モダンデザイン)の始まりとも認識され、現在、インダストリアル・デザインと呼ばれる分野の基礎にもなっています。

ヘルマン・ムテジウスが中心となり、その他初期メンバーとして、テオドール・フィッシャーハンス・ペルツィヒヨーゼフ・ホフマンアンリ・ヴァン・デ・ヴェルデなどが活動しています。さらに、デザイナーだけではなく、幅広い分野から参加者や企業が集まりました。

後に起こる、ムテジウスとヴァン・デ・ヴェルデとの間に「規格化論争」と呼ばれる対立も有名です(今後の記事にて触れる予定です)。

1933年、ナチスによって解散させられますが、戦後1946年にジュッセルドルフで再結成し、現在も続いています。

  

ドイツ工作連盟発足に至るまで

第一回ロンドン万博

ドイツ工作連盟発足への流れにおいては、1851年にロンドンで開催された第一回万国博覧会に遡ります。

それまでフランスに始まり、オーストリア、ベルギー、スペイン、ドイツ、アメリカなど国内博は開かれましたが、万博は世界で初めての実施となりました。出典品の半分以上はイギリスのもので、産業革命によって伝統的な産業(農業など)が後退し、代わって栄えた工業産業の圧倒的な進歩が世界に発信されました。ドイツから訪れた建築家、ゴッドフリート・ゼムパーもその一人で、機械の可能性に衝撃を受けることとなりました。
しかし、新技術や新素材を用いた出展品は、ガス灯を例に挙げると、新たな技術であるガス管は隠し、オイルランプ風や燭台風にデザイン、というように、伝統的な意匠を模したデザインがなされていました。ゼムパーは、手工業的であったり、伝統的な流れから離れ、新素材・新技術に適合した新たな基本形態や芸術様式が生み出される必要があると考え、それに応じた教育改革の必要性を唱えました。

その後19世紀末〜20世紀初頭にかけて、ドイツの工業生産の進歩とともに経済活動が活発になりました。それを受けて実際に、機械技術の進歩に呼応した新しい建築や工芸の様式を確立しようという気運は高まり、造形教育の改編に取り組むこととなります。

 

イギリスへの派遣と学び

改革のために、ドイツは当時の産業先進国イギリスから学ぶ取り組みを行います。1896年には、ロンドンのドイツ公使館にアタッシェとして、ヘルマン・ムテジウスが派遣されます。ムテジウスは、プロイセン内閣の企画庁で建築家として働いていた人物で、ロンドンで7年間勤めたのち、ドイツへの帰還後はその経験を『英国の家』にまとめます。同時にプロイセン商務省の枢密顧問官となり、プロイセンの工芸学校の改編に着手しました。下記の例のように、いくつかの取り組みを行なっています。

 

  • 若く有能な建築家の採用

ペーター・ベーレンスデュセルドルフ工芸学校へ、ハンス・ペルツィヒをブレスラウ工芸学校へ、ブルーノ・タウトベルリン工科大学へ、というように、若く有能な建築家を招きました。

 

  • 各学校に工房の設置 

イギリスの建築家のチャールス・ロバート・アッシュビーが1901年に「木工と金工のギルド」として手工芸の修行を目的とする工房を設立したのに倣って、学校に工房を設置し、実地研修を教育課程に組み込みました。
単なる造形教育としての芸術と手工芸の観念的な結びつきの理解ではなく、技術的な工房での実践によるより高次的な理解によって、材料と形態の関係を認識させ、即物的・経済的・合目的にデザインできるようにしようという試みです。

 

 第三回ドレスデン工芸展

1906年に開催された第三回ドレスデン工芸展では、美術、美術工芸に加え、機械家具などの美術工業も展示されました。これまでにない製品が並び、イギリスやフランスと比較して産業革命が遅れたドイツの努力の成果が見られます。しかし、ムテジウスは、ドイツの工芸が経済性を追い求め、真にザッハリッヒな様式が見られないとして批判しました。

これがきっかけとなり、1907年にドイツ工作連盟が結成されるのです。
工作連盟は、ドイツがそれまで行ってきた取り組みの中でも最も大きなもので、その後のドイツの工業のみならず、世界のデザインにも大きく影響を与えていきます。

 

参考文献
『歴史の流れがひと目でわかる 年表・系統図付き 新版名作椅子の由来図典』西川栄明, 誠文堂新光社
『バウハウスー歴史と理念<記念版>』利光功, マイブックサービス
『ウィリアムモリスとアーツ&クラフツ』藤田治彦, 東京美術