WELL life style
#03 ガラス作家 沖田奈央さん
移ろいゆく景色を表現する色ガラスと形
性別、年齢、国籍を問わず、現代に暮らす人々が共通して抱いているのは、豊かな生活を送りたいという願望だと思います。ただ、その豊かさは人それぞれの感じ方や求めている事が異なるのも事実です。
100人居たら100通りの生活があります。私達から見て豊かな生活を送っていると感じている人達へのインタビューを通して、豊かな暮らしを送るためのヒントを探っていきます。
塊から見えるガラスの美しさ
季節の景色を器に表現するガラス作家 沖田奈央さん。型を使い、窯でガラスを溶かすキルンワークという方法で形を成形し、ひとつひとつ機械で削り、形を整え、幻想的な美しさと温かみのある作品に仕上げます。
沖田さんから見たガラスの魅力、作品を作る際に得ているインスピレーションを伺いました。
景色と言葉、形からイメージする季節感
ーー色ガラスを重ねて表現するようになったきっかけはありますか?
学生のころに、積層して溶け固まったガラスの塊の断面、断面から見える奥行きの美しさに見惚れて、それがきっかけで今の作品制作につながっています。
生活に身近なものを作りたいと思い始めたのは、大学を卒業してからです。
それまで塊として表現していたものをどうやって器に落とし込んでいこうと考えた際に、積層の断面を柄として表現しようと思いました。柄をデザインする面白さに気付き、今の作風になっていきました。
ーーそうだったんですね。沖田さんの作品は季節に関連する言葉が印象的で、どのようにタイトルをつけているのでしょうか。
昔から季節の移ろいや、その季節にしかない景色を見たり、季節の風を感じることが好きなんです。その景色に合う季節の言葉を借りて、タイトルを付けています。
季語は面白くて、豊かな情景を想像させてくれるんです。その言葉が表す景色を私自身も知っていると気づくと、思いがけなく驚くこともあります。
景色から言葉を選ぶときもあれば、言葉から景色を想像することもあり、それぞれのイメージを行き来しています。
ーー中には「栗菓子」というお名前もありますよね。
確か、帯留めですね。ご依頼をいただいて製作したアイテムです。
いつも、納品時の季節に合わせて形や色合いを決めています。この時は秋〜冬だったので、いくつか制作した中のひとつとして栗菓子をイメージしたものを作りました。(写真:上段 / 真ん中)
ーー景色や言葉、形の印象から作品になっているんですね。
光を通すガラスが立体的になったときの見せ方や、形に合わせて表現を工夫することに面白さを感じています。形に関しては、色合いや積層の見え方を邪魔しないよう、できるだけシンプルなものを意識しています。
手にとってくださった方が、生活の中で使ったり眺めたり、お手元で楽しでいただけると嬉しいなと思って、器などの形を通して制作しています。
造形で意識するデザインのバランス
ーー生活に取り入れらるようにと、いろいろなアイテムがあるのですね。絵を飾るように、その方が暮らしの中でどこに置いているか知ることができたら、もっと楽しいかもしれませんね。形のところで、使い勝手と沖田さんが作りたい形のバランスは、どのようにしていますか。
ガラスの凛とした雰囲気を大切にして仕上げています。それと同時に使い勝手が悪くない形かどうか確認して、制作しています。
ーー制作中に思いがけないこともありそうですね。
予想を越えた大きな泡が入ってしまう時はありますね。それをカバーできるかどうか、どうしたら良いと思えるか。難しいですが少しずつ調整しながら、加工することになります。
特に、グラスの場合、口が当たる部分に小さい泡が出ると、安全に使える質感になるのか、どこまでの範囲を削るか難しいことがありました。失敗すると落ち込みますね。
ですが、やっていくうちにより適切なガラスの詰め方に気付き、自分の技術が進歩する実感もあります。
場所:WELLショールーム(作品をご覧になるお客様は、ご予約不要です)
期間:2022年7月23日(土)〜7月31日(日)
営業時間:平日12:00〜19:00
土日祝11:00〜20:00
定休日:水・木曜日(個展会期中の7月28日(木)はオープンいたします)