WELL life style #07 大谷製陶所 大谷哲也さん 1.ものをつくる人の暮らし

WELL life style #07 大谷製陶所 大谷哲也さん 1.ものをつくる人の暮らし

性別、年齢、国籍を問わず、現代に暮らす人々が共通して抱いているのは、豊かな生活を送りたいという願望だと思います。ただ、その豊かさは人それぞれ感じ方や求めている事が異なる事も事実です。

100人居たら100通りの生活があります。私達から見て豊かな生活を送っていると感じている人達へのインタビューを通して、豊かな暮らしを送るためのヒントを探っていきます。

  

WELL LIFE STYLE #04  大谷製陶所 大谷哲也さん

 2. 体の一部となったろくろから生まれる形

 3. 大切にする今とこれから

  

滋賀県信楽町に同じく陶芸家の奥様:桃子さんと共に自宅・工房を構え暮らす、大谷哲也さん。現在は大谷製陶所としてお弟子さんを迎え、皆さんでものづくりを行います。


ご自宅での皆さんのお昼にお邪魔し、ご馳走をいただきながらお話を伺いました。
体に染み込むまで手を動かすという皆さんの姿、暮らしと密接に繋がったものづくりの現場を拝見しました。

  

 

ものをつくる人の暮らし

ーー以前デザインを教えるお仕事をされていたところ、奥様やそのご家族の影響を受けながら陶芸の道へと向かわれたと伺いました。

 

将来、建築か自動車のデザインに関わる仕事に就きたいと思い、大学進学を選んだことが最初の第一歩でした(1991年19歳)。残念なことに入学するとすぐに、ペンと定規を使ってきちんと図面を引くことが、どうも苦手だということがわかり、建築の方へ進むのを断念し、デザインを学ぶことを選びました(20歳)。そこで初めて授業で粘土に触れ、ろくろを体験し、自分はこういう感覚的なことの方が好きなんだなぁということを知りました。ただその時点では、陶芸でごはんを食べていくことになるとは、これっぽっちも思いませんでした。

 
大きな転機は就職浪人までして希望していた車のデザイナーになれずにぶらぶらしていた僕に、大学の助手の方が、陶磁器の研究所である信楽窯業試験場での職を勧めてくれたことでした。
試験場の主な業務は、信楽焼き業界に向けて新素材や製品の研究開発をしたり、後継者育成事業として信楽焼きの技術を研修生に教えることです。そこで僕はデザイン科の研修生や業者さんに製品開発や石膏型の作り方などを指導する仕事に就きました(25歳)。研修生のほとんどが自分と同年代で、1〜3年程度、信楽焼きの技術を学ぶために通っていて、後にパートナーとなる桃さんもその中にいました。
通ってくる研修生が将来に向けて研鑽を積む姿を見てなんだか眩しく感じました。
そして同時に桃さんのご両親やその友人の方達とお付き合いを重ねるうちに、生活と仕事が一体化した、「ものを作る人の暮らし」がとても素敵なものに感じるようになりました。
何よりも彼らは暮らしをとても楽しんでいるのです。
なりたい自分になれずに悶々としていた僕でしたが、予期せずしてここで、陶磁器の知識となりたい自分という目標を手に入れたのです。

 

 
結婚後、桃さんや陶芸を生業にする周りの人たちに触発され「朝練」と称して、借家の庭先にある洗濯場を囲った小さなスペースで、出勤前にロクロの練習を始めました(28歳)。
少し作れるようになった頃に、桃さんの仕事のお付き合いの方から、旦那さんも一緒に出展しませんかとお誘いを受け「工房からの風」に出展し、作品を世に出しました(32歳)。
今作っているものとほとんど変わらない、ロクロで作った白いうつわです。
このことを境に、僕の独立志向がむくむくと膨らみ、意思を持って加速度的にやきものへ向かって進みはじめ、12年間務めた窯業試験場を退職し、桃さんと二人で大谷製陶所を開窯することになりました(2008年36歳)。

 

 

ーー大谷さんが感じられる、陶芸の魅力はどんなところにありますか?

 

やはり、魅力は「ものを作る人の暮らし」にあると感じました。
きっと木工や金工でも同じように感じたと思います。

 

 

「2. 体の一部となったろくろから生まれる形」へ続く