椅子の歴史④   合理的機能的な20世紀以降のモダニズム

椅子の歴史④ 合理的機能的な20世紀以降のモダニズム

以前の記事(椅子の歴史③)では、19世紀の椅子の流れとアメリカの植民地としての椅子の変遷をみてきました。

今回は20世紀の流れと椅子についてみていきます。

 

20世紀〜

19世紀末頃〜モダニズムの流れが出てきます。かつての装飾を多用する建築などの芸術を否定し、分離派や機能主義の流れを汲んだ合理的機能的でシンプルな傾向です。20世紀は世界各国で様々な芸術の傾向が見られ、名作椅子が生み出されます。

  

デ・スティル

第一次大戦後のオランダでは、抽象的な造形への関心が高まり、デ・スティル派が高まります。1910年代後半から30年代にかけて、オランダで起こった造形運動のことをデ・スティルと呼びます。この由来は、1917年に創刊したオランダ語で「様式」を意味する美術雑誌「デ・スティル」から。

単純な直線構成と、赤・青・黄の3色で構成した抽象画で知られるピエト・モンドリアンの理念を受けています。線・面・色彩に還元された空間を具現化した例では、「シュレーダー邸」のほか「赤と青の椅子(レッド・アンド・ブルー)」「ジグザグチェア」を手掛けたヘリット・トーマス・リートフェルトが代表作家として知られています。

 

 

バウハウス

「デ・スティル」創刊の2年後、合理主義的で機能主義的な考えを持つヴァルター・グロピウスによって、1919年に創設された国立造形学校バウハウスドイツワイマールのバウハウスは、総合的なデザイン教育の拠点となりましたが、急進的で革新的な理念であったために、当時の政治情勢に受け入れられませんでした。1925年にデッサウで市立学校として再開校、1932年ベルリンに移転などを行いましたが、1933年には閉校を強いられています。

バウハウスに関わる作家としては、教鞭をとったヴァルター・グロピウス(キャンチレバーの椅子の先駆けとなった「F51アームチェア」などでも有名)や、ミース・ファン・デル・ローエ(鋼材と皮革による「バルセロナチェア」、スチールパイプの「MRチェア」が代表作)、バウハウスで育ったマルセル・ブロイヤー(スチールパイプを構造体に使った「ワシリーチェア」 、「チェスカチェア」が代表作)などが挙げられます。

  

 

アール・デコ

アール・デコ1925年様式は、幾何学形態が多く用いられています。これは、1925年の現代装飾産業美術国際博覧会(アール・デコ博)で大成された装飾的なスタイルです。アール・ヌーボーなどの装飾的なスタイルは一時的に衰退していましたが、ゼツェッションなどの影響を受けて工業デザインと結びつき再び栄えました。ニューヨークの「クライスラー・ビル」に代表されるように、産業資本のバックアップを受けてアメリカでも発達しました。1930年代に流行した流線型のデザインも、この様式の影響を引き継ぐもので、日本では「旧朝香宮邸(現東京都庭園美術館)」が代表例として挙げられます。

  

また、同じ頃に近代の建築や住宅デザインに大きな影響を与えたのは、ル・コルビュジェです。近代建築五原則の理論に基づき様々な合理的システムを提案しました。代表的な建築物として「サヴォア邸」、家具では自身の門下生であるシャルロット・ペリアンと共作した「シェーズロング(カウボーイチェア)」が有名です。

 

フランク・ロイド・ライトは、機能主義全盛の建築デザインに対して、人間の健康的な生活に適する有機的建築を唱え、水平ラインと深い庇が特徴的なプレイリースタイルを築いた人物です。カウフマン邸(落水荘)など優れた住宅のみならず、「タリアセン・ウエスト・チェア」などの家具も残し、デザイナーに大きな影響を与えています。

  

 

アメリカのモダンデザイン

第二次世界大戦が終わった1950年代以降のアメリカでは、ミース・ファンデルローエマルセルブロイヤーらの他にも様々な作家が活躍しています。

ハーマンミラー社で活躍したチャールズ・イームズは、成形合板やアルミニウムを使った「プライウッドチェア」「ワイヤチェア」「ラウンジチェア」「アルミナムグループ」などの椅子が有名です。また、強化プラスチックの座とアルミニウムの脚が特徴的な「チューリップチェア」で知られるエーロ・サーリネン、スチールワイヤーの「ダイヤモンドチェア」を手掛けたハリー・ベルトイアなどが機能的な椅子を手掛けています。

「ラウンジアーム」などが代表作と言えるジョージ・ナカシマは、手工業的な手法の木製家具で人気を経ています。岐阜提灯をアレンジした照明器具AKARIの作者としても有名なイサム・ノグチも椅子を残しており、モダンデザインに対してクラフト的なデザインを行っています。

 

  

スカンジナビアン・モダン

北欧では、1930年代に民族的伝統や風土世とモダンデザイン の融合を図り、材質感に富んだ温かみのある建築・インテリアが生まれていきます。

代表的的なデザイナーとして、フィンランドの建築家で成形合板を使った「パイミオチェア」でも有名なアルヴァ・アアルトや、アルミ製の屋外用椅子「ランディ」が有名なハンス・コーレイが挙げられます。

北欧の家具は戦後まもなく復興し、北欧諸国はスカンジナビアン・モダンと呼ばれる家具を生み出していきます。中でも特に優れた家具を生み出したのはデンマークで、デーニッシュモダンと呼ばれます。

デーニッシュモダン 

デンマークの家具デザインは、優美な曲線を特徴としているものが多くあります。無垢材の木肌を活かした、クラフト的な形態が特徴的な椅子を生み出したハンス・ウェグナー(以前の記事:「北欧発デザインの椅子 ハンスJ・ウェグナー」「北欧家具の有名デザイナー ハンスJ・ウェグナー」)、新素材を用いたユニークな形態の家具が有名なアルネ・ヤコブセン(以前の記事:「北欧発デザインの椅子 アルネ・ヤコブセン」「北欧家具の有名デザイナー アルネ・ヤコブセン」)などがデザイナーとして代表的です。

デーニッシュモダンの基礎を築いた家具デザイナーとして、コーレ・クリント、木製の彫刻的な造形が特徴的な家具を作ったデザイナーフィン・ユール(以前の記事:「北欧発デザインの椅子 フィン・ユール」「北欧家具の有名デザイナー フィン・ユール」 )、スチールを用い、キャンティレバー構造を採用したシャープな曲線の作品を多数作ったポール・ケアホルム、PHランプと呼ばれる照明器具のシリーズで知られる照明デザイナーのポール・ヘニングセンも、この時代を彩りました。

イタリアンモダン

大胆な形と鮮やかな色彩が特徴の戦後イタリアのデザインは、家具分野でも主導的な地位に立っています。

軽量木製椅子の「スーパーレジェーラ」がベストセラーとなったジオ・ポンティ、「セレーネ(FRP(繊維強化プラスティック)の一体成形で強度がある)」が有名なヴィコ・マジストレッティ、「キャブチェア(スチールの骨組みに皮をかぶせた椅子)」が有名なマリオ・ベリーニ、「アルコ(台座から弧を描くようにアームを伸ばした照明)」など斬新な照明のデザインで知られるアキーレ・カスティリオーニなどが、イタリアンモダンの有名デザイナーといえます。

家具の国際見本市であるミラノサローネの成功で、1960年代から家具デザインの中心はイタリアへと移っており、日本人では、喜多俊之らがイタリアに渡って活躍しています。

 

 

 このような流れの中で、現代へ、今日の椅子へとつながります。改めて生活の道具である椅子も、芸術を含む時代の流れの中で変化しながらデザインされたり、使用されたりしていることが感じ取れました。家具のデザインはもうほとんど飽和しているなどとも言われていますが、未来ではどのように振り返られているのでしょうか。

 

 

椅子の歴史について

 

 

参考文献

『インテリアコーディネーター1次試験合格教本第11版下巻』ハウジングエージェンシー出版事業部

『名建築と名作椅子の教科書』エクスナレッジ




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