WELL life style #04 fresco(フレスコ) 辻野剛さん<br>1. 生活に取り入れるガラスの提案

WELL life style #04 fresco(フレスコ) 辻野剛さん
1. 生活に取り入れるガラスの提案

性別、年齢、国籍を問わず、現代に暮らす人々が共通して抱いているのは、豊かな生活を送りたいという願望だと思います。ただ、その豊かさは人それぞれ感じ方や求めている事が異なる事も事実です。
 
100人居たら100通りの生活があります。私達から見て豊かな生活を送っていると感じている人達へのインタビューを通して、豊かな暮らしを送るためのヒントを探っていきます。

  

  

 

生活に取り入れるガラスの提案

大阪府和泉市に工房を構える、ガラスメーカーfresco(フレスコ)。
吹きガラスの技法を用いた器は、一つ一つ手作りです。工房内では、基本的に二人一組、それぞれのチームが溶解炉から溶けたガラスを巻き取り、下玉と呼ばれる小さな玉を作るところから、息を吹き込み成形、何度も窯と作業ベンチを行き来しながら、仕上げまでの全工程を行います。

 
代表の辻野さんが、ガラスに魅せられ学び、frescoを立ち上げ、現在もチームで続けるものづくり。今回は、辻野さんが国内外でガラスを学んだ当時のことや、frescoへの想い、frescoのプロダクトやものづくりへの考え方について、また和歌山県白浜町に設けた新たな工房CAVO(カーヴォ)と取組む、新たな挑戦についてなど、3時間にわたってお話を伺いました。

 

 

アートではなくデザイン
プロダクトとして提案する理由

ーー大西:個人作家ではなく、frescoとしてチームでものづくりをされていますね。

 
工房を作ったときは元々、辻野剛の個人工房として作ったんですよ。建物自体はなぜか広い場所にしか巡り会わなくて、広いなと思いながらそこに住居と工房とを分けて作りました。自由に創作活動ができるとかって思っていたんですよね。

 

 

当時は、美大・芸大にガラス科ができたり、ガラスの専門学校ができたりと、結構ガラス人気だったんです。それなりにキャリアを積んでいくと、そのような所にワークショップの講師やレクチャーで呼ばれるようになって、色んな学生に出会う機会がありました。

すると、そこでは作家教育がされている。もちろん学校なので、学問としてガラスを教えるスタイルになるとは思うんです。ただ美術・アートの分野なので、成功する・やりたいことで食べていくという人は一握りのはずなんですけれども「いや、一握りもいないやん」って感じで。やっぱりそれは、ちゃんと評価できる人がいないからだと思い、裾野を広げなければいけないと思ったんですよね。

 

日本でと考えた時に、そのためには使えるものでないと評価できない、という風に感じました。それが何であるかというタグ付けをしないと、人はそれを生活に取り入れようとしない。

例えば、オブジェをなんとなく好きで買った。家に持ち帰って、改めていいなって思うんだけれども、いざ友達を呼んだ時に「これ何?」って聞かれたらどうしようって感じるんですよね。日本人はあると思うんですよ。

 

ーー一同:あるあるですよね。

 

でもそれが、スイッチを入れると光が出る、照明器具です。って言うと「へえ、綺麗だね。」となる。それで人と共感を持てる、みたいな。
用途があることで人と価値観を共有できるみたいなことで、安心して生活に取り入れることができる。使ってみると、それが良いとか悪いとか、機能的な部分や審美性も含めて、なんとなく判断できていく。そういうものの反復でしか、本当にいいものというのは評価されないんだろうなと思いました。

 

人の生活に取り入れられるように設計する。それはすなわち、デザイン。だから、アートに取組むのではなく、生活に取り入れられるように計画して、ちゃんと伝えて、選び使ってもらう、という仕組みを作るしかない、ブランディングするしかない。というわけで、オープンして5年目でfresco(フレスコ)という工房名でブランドを立ち上げたんです。

 

 

手作りという選択
個体差の捉え方

その後、カタログを作ってこんなものを作っていると人に見せられるような状況になっていきました。

ただ、手づくりなので個体差があります。
できたものに個体差が極力出ないように作るのですが、ネガティブに捉えるのではなく、それが手づくりの良さですよと提案しています。AのものとBのものを「選ぶ楽しみ」みたいなことも、商品として提供するというような考え方です。

なのでショップさんには、同じデザインのものを1個ではなく、2個、もしくは2個以上置いてもらい、お客さんに常に選んでもらえるような売り方をお願いして、手づくりのクラフトプロダクトを出していこうとなりました。

 

ー吉田: 個体差の部分は、僕らの方(オーダーメイド結婚指輪・婚約指輪のith / WELL)でもあります。 手仕事って、100%同じにならないじゃないですか。 そこが良さだと認識・理解してもらうのは、大変だったんじゃないかなと思います。

 

オーダーメイドの方は、やっぱり厳しいのかなと思いますね。できたものを選ぶっていうと、選択肢が目の前にあって、Aを選ぶか、Bを選ぶかという悩みは結構楽しい悩みですよね。

ただ、売り方としては大変です。 今、オンラインストアではHQ(House Quality)というラインを販売しているんです。 手づくりで誤差が出るというのは前提ですけれども、ちょっと大きすぎる、小さすぎる、色が薄すぎるとか、うちのスタンダードから外れてしまったもの、でもものとして傷物ではない、というものです。 一つ一つ写真を撮って、これがスタンダードと何が違うかという説明をつけて販売しないといけないので、大変というと大変ですね。

 

 

色彩のこと

ーー村上:透明のガラスを作られているかたが多い中で、この色彩に至った経緯みたいなことをお聞かせいただけますか?

 

ガラス作家さんって、大体ガラスの素材に惚れてものづくりをやっているので、その透明性みたいなものをいかに綺麗に見せるかっていうところに注力してつくられている方が多いと思います。

僕はどちらかというと「透明=存在がない」と思うんですけれどもね。その存在がないもので、存在感あるものをつくるというそのアイロニーというか、そこに面白さを感じていて。いわゆるガラスって言葉を聞いて皆がイメージする透明なものよりは、ちょっと濁った色味が得意というか好きでした。

 

 

あとは、元々ガラスって透明じゃないので。他のクラフトと違うのは、そこが大きなところだと思っていて。木工だったら生えている木を切り出してくるし、陶芸だったら裏山から土を採ってきて焼くといった具合に、自然そのままなんですよね。でもガラスっていう素材は、すごく人工的。人工的なものを溶かしてつくっているので、スタートラインが違う。だから同じクラフトと言っても、ちょっと違うんじゃないの?って思っています。

 

じゃあ自然のガラスとは何かというと、長石とか石英が自然界のガラスって言えばガラスなんですけども。ガラスの成分では、8割以上が珪砂という砂なんです。そこには鉄分がたくさん生まれていて、それが発色するんですね。すごく温度を上げないと溶けませんが、それをそのまま溶かしたら、多分緑色の不透明な下水みたいな色のものになるんですよね。 

そういう不純物が含まれたような、自然にあったような状態にリバースしていくというか。透明が0としたら、不透明が100で、その間の色の透過度でいいところを探します。日本人って、障子を通したあかりとか、木漏れ日とか、直接的な100%のあかりよりは、いろんなものを透過したあかりを楽しめる民族だと思うので。そういう価値観に反応させるようなガラス、みたいなものを作れたらいいなと。
よく最初の頃は、プロダクトのデザイナーの方に「辻野さんのガラスは汚いガラスだからね〜。」とか言われたりしましたね(笑)

 

ーー一同:えー、ひどい(笑)

 

あとは、日本の食卓を見たときに、ガラスだけが別物みたいな感覚もあります。
ガラスだけが中身だけを見せる容器だったりするので、ガラスも存在するんですよというアピールが少しあって、他のものと喧嘩しないものをという、大きな括りでデザインしてきたつもりなんです。それがちょっとずつ、支持されてきてはいるのかなと思ってはいるんですけどね。

 

 
 
 
 

 

 

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